休日の昼下がり、SNSを開けば、同僚は趣味のキャンプの写真を上げ、友人はスキルアップの勉強会に参加している。 それに比べて、私には熱中できる趣味も、将来成し遂げたい目標もない。
「私の人生、このままでいいのかな」 「私が本当にやりたいことって、一体何なんだろう?」
そう自問自答しては、何も浮かんでこない自分を「中身が空っぽのつまらない人間だ」と責めていませんか。
安心してください。あなたに「やりたいこと」がないのは、あなた自身に魅力や情熱がないからではありません。 あなたがこれまで、「自分の気持ち」よりも「他人の正解」を優先しすぎるあまり、心の欲求センサーの電源を切ってしまったからです。
本記事では、見失ってしまった「自分」の在り処を探し出し、麻痺した心のセンサーを安全にリハビリしていく方法をお伝えします。
第1章:「Want(やりたい)」を殺し、「Must(ねばならない)」で生きてきた代償
「自分が何をしたいか分からない」という悩みを持つ人の多くは、幼少期から現在に至るまで、とても優秀で真面目な「いい子(いい人)」として生きてきました。
- 「親が喜ぶから、この学校に行こう」
- 「波風を立てたくないから、友達の意見に合わせよう」
- 「会社で評価されるために、期待される役割を完璧にこなそう」
このように、自分の行動基準を常に「他人がどう思うか(他人軸)」に置いて生きてきた結果、脳の中で大きな異変が起きます。 それは、「私がしたい(Want)」という微弱な声が、「私がすべき(Must)」という他者からの強烈な命令にかき消され続けるという現象です。
使われない筋肉が衰えていくように、あなたの「自分の欲求を感じ取るセンサー」は長年の休眠状態に入り、サビついて動かなくなってしまったのです。これが、今のあなたが感じている「空虚感」の正体です。
第2章:「大きな夢」や「やりがい」という幻想を捨てる
自分のやりたいことを見つけようとする時、多くの人が陥る罠があります。 それは、世間が押し付けてくる「人生を懸けるような大きな夢や、情熱を持てる仕事を見つけなければならない」という思い込みです。
しかし、長年センサーが麻痺していた人が、いきなり「天職」や「運命の趣味」を見つけることなど不可能です。 骨折してギプスを外したばかりの足で、フルマラソンを走ろうとするようなものです。
まずは、「やりがいのある大きなことを見つけなきゃ」というプレッシャー(新たなMust)を手放してください。 あなたが最初に見つけるべき「やりたいこと」は、誰かに誇れるような立派なものである必要は全くありません。もっともっと、ちっぽけで自己中心的なことで良いのです。
第3章:サビついたセンサーを動かす「1%のリハビリ」
失われた自分を取り戻すには、日常の極めて小さな選択から「自分軸」を取り戻すリハビリが必要です。今日からできる小さな練習を始めましょう。
1. ランチのメニューを「機能」で選ばない
お昼ご飯を選ぶ時、「安いから」「早く出てくるから」「同僚がそれにしたから」という理由で決めていませんか? それは「機能」や「他人」で選んでいる状態です。 今日からは、メニューを見る前に「今、私の胃袋は何を欲している?」と自分自身に尋ねてみてください。「今日はどうしても、ちょっと高いけど温かいハンバーグが食べたい」という小さな欲求を拾い上げ、叶えてあげること。これが最大の治療になります。
2. 「なんとなく嫌だ」という不快感を大切にする
「何が好きか」を見つけるよりも、「何が嫌いか」を見つける方が、センサーは働きやすいです。
- 「この服、チクチクしてなんとなく嫌だな」
- 「あの人の話し方、ちょっと疲れるな」 今までなら「これくらい我慢しなきゃ」と蓋をしていた「小さな不快感」に気づいたら、それを否定せずに「私は今、嫌だと感じているんだね」と肯定し、そっと距離を置いてください。不快を避けることは、自分を大切にする第一歩です。
3. 「生産性のないこと」を全力でやる
「これをやっても意味がない(お金にならない、成長しない)」という理由で諦めていたことを、あえてやってみてください。 無意味に海を見に行く、一日中パズルをする、気になっていたカフェのプリンを食べる。 他人の評価が一切介入しない「ただの無駄な時間」にこそ、あなたの本当の「Want」が隠れています。
結論:あなたは、空っぽなんかじゃない
「やりたいことがない」 そう嘆くあなたの心の奥底には、長年押し殺されてきた「本当のあなた」が、分厚い氷の下で静かに眠っているだけです。
あなたは決して、空っぽでつまらない人間ではありません。 誰かの期待に応えるために、自分の心を透明にするという「過酷な生存戦略」を生き抜いてきた、とても優しくて強い人です。
もう、誰かの正解を生きる必要はありません。 ここは「Safe Base(安全基地)」。あなたがどんなにちっぽけで、わがままで、生産性のない欲求を持っていたとしても、それが許される場所です。 焦らなくて大丈夫。まずは今日の帰り道、「私が今、一番飲みたい温かい飲み物」を買って帰ることから、新しい自分を始めてみませんか。

