1. はじめに
管理職として、Z世代の社員との向き合い方に悩むことは少なくありません。Z世代は、一般的に1990年代後半から2010年頃に生まれた世代を指し、情報にアクセスする能力が高く、多様な価値観を持っています。そのため、従来の管理手法が必ずしも通用せず、特に柔軟な労働環境や自己実現の機会を求める傾向が強いのが特徴です。
私自身も1997年生まれのZ世代ですが、同時にマネージャーの立場も担っているため、両者の気持ちや価値観を理解しています。
近年、「心理的安全性」という言葉をよく耳にしますが、Z世代からすると、この「心理的安全性」が過度に強調されると違和感を覚える場面もあります。ここでは、Z世代の特性を理解し、管理職としてのアプローチを改善するためのヒントを紹介します。
2. 考察にあたって
Z世代は、成長を感じられない職場環境や自己実現を見出せない仕事に対して早期に見切りをつけ、転職やフリーランスとしてのキャリアを選択する傾向があります。また、メンタルヘルスの問題にも敏感で、職場が精神的に健やかな環境を提供できない場合、離職やパフォーマンスの低下リスクが高まります。これらの傾向は、企業にとって若手社員の定着や生産性向上における大きな課題となっています。
3. 課題 ~Z世代の3つの心理的特徴から~
各特徴に対応する課題の原因を以下のように分析します。
● 不確実性や将来への不安
Z世代は将来に対する不安を常に抱えているため、安定したキャリアよりも「今、どれだけ自分が成長できるか」や「価値のある仕事か」に強い関心を持ちます。
現代の転職市場でもこの傾向が顕著で、3年で転職するのが一般的となっています。特に、仕事内容や昇給のスピードなどで会社に見切りをつけて転職するケースも多いため、Z世代の将来への不安をどのように解消するかが企業の課題です。
● 心理的安全性と成長環境のバランス
Z世代はメンタルヘルスを重視しており、職場環境がそれに配慮していないと、早期の離職やパフォーマンスの低下リスクが高まります。心理的安全性が確保されていない職場は、Z世代にとって長く働きたい場所とはなりません。
一方、心理的安全性を重視しすぎると、成長機会が不足する可能性があります。そのため、企業側は心理的安全性を確保しながらも、いかに成長環境を提供するかが課題となります。
● 自己実現とキャリア選択の柔軟性
Z世代はキャリアにおいて、高収入や安定だけでなく、自分が情熱を持てる仕事や価値観に合った職を重視します。ワークライフバランスや精神的な充足感も重要視しているため、伝統的な「会社に忠誠を誓う」という価値観は薄く、自分に合った環境を見つけるために転職やフリーランスとしての柔軟なキャリア選択を行いやすい傾向があります。
この結果、企業は優秀な人材を引き留めることが難しくなっており、いかに優秀な人材を定着させ、生産性を向上させるかが課題となります。
4. 解決策
● 不確実性や将来への不安への対応
キャリア開発プログラムやメンターシップ制度の導入が有効です。明確なキャリアパスを示し、短期的な目標を設定することで達成感を得られるようにしたり、メンターシップ制度を活用して、上司や先輩社員から定期的にフィードバックを受けられる環境を整えることが、自己成長を促進するために効果的です。
ここで重要なポイントは、メンターの選び方です。メンターは、入社数年の先輩社員ではなく、一定のキャリアを積んだ社員が務める方が効果的です。特に、豊富な経験を持ち、会社の文化や戦略に対する深い理解がある人物が適しています。これにより、幅広い視点からのアドバイスやサポートが提供され、メンティーにとって成長やキャリア形成に役立つフィードバックを得ることができます。
また、場合によっては社外メンターの活用も選択肢です。外部のプロフェッショナルメンターは中立的な立場からフィードバックを提供でき、社内では得られない視点やアドバイスを提供することがあります。
● 心理的安全性と成長環境のバランスの確保
心理的安全性を重視しつつも、挑戦する機会とのバランスを取ることが重要です。挑戦する機会を与える際には、ただ業務を任せるだけではなく、適切に設計された挑戦を提供することが求められます。
たとえば、最初から個人での挑戦を与えるのではなく、チームでの目標達成経験を積ませ、組織としての達成感を味わわせる方が良いでしょう。これにより、挑戦に対するプレッシャーを軽減し、組織内での達成感や一体感を高めることができます。
このように、協力し合いながら達成経験を積むことで、「この会社やチームで挑戦したい」と思わせる意識を育て、その達成経験が人材の確保にもつながります。
● 自己実現とキャリア選択の柔軟性に対応するための方策
柔軟なキャリアパスを提供することが重要です。部署間異動の機会や副業の奨励など、Z世代が自身の情熱に従ってキャリアを築ける環境を整備します。また、ワークライフバランスを尊重し、リモートワークやフレックスタイム制度を導入して、それぞれのライフスタイルに合った働き方をサポートすることが求められます。
ただし、リモートワークによって上司や同僚との接触機会が減少し、フィードバックや評価を受けにくくなることがあります。これがキャリアに対する不安を引き起こす可能性があるため、柔軟な働き方を提供する中でも、適切なマネジメントが必要です。
5. 結論
Z世代の特性に合わせた柔軟なマネジメントが求められる時代です。企業が成長機会を提供し、自己実現を支援する仕組みを整えることで、Z世代の社員は高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。また、メンタルヘルスへの配慮を忘れず、心理的安全性の高い職場環境を作ることが、Z世代の定着やモチベーション向上に寄与します。
これらの取り組みを通じて、企業はZ世代と共に成長し、持続可能な組織運営を実現することができるでしょう。

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