【はじめに】「何を感じているのかわからない」という悩みが増えている
・悲しいのか、疲れているのか、自分でもよくわからない
・心がフラットすぎて、嬉しいことにも反応できない
・「どう思う?」と聞かれて答えに詰まる
・本当はしんどいはずなのに、しんどいと感じられない
こうした状態は、心理学の世界では“解離的鈍麻”(ディソシエーション性エモーション・ブロック)と呼ばれます。
これは病気ではなく、脳があなたを守るために行う“自動防御反応”です。
【結論】感情がわからなくなるのは「感じないようにする」ほうが安全だと脳が判断したから
脳は危険を察知すると、
「今“感じる”とつらすぎる」
「今“考える”と崩れてしまう」
と判断し、感情のスイッチを一時的に切ることがあります。
これが“解離的鈍麻”です。
つまりこれは、
心が弱いのではなく「生き延びるために」起こる反応
だということです。
【原因①】強いストレスで“感情処理の回線”がオフになる
人が感情を理解するには、
「感じる」→「意味づける」→「言語化する」
というプロセスが必要です。
しかし、ストレスが限界を超えると…
- 感情の信号が弱くなる
- 前頭前皮質(感情の理解)が働かなくなる
- 扁桃体(危険察知)が過活動になる
結果として、
“感じる能力”そのものが低下 します。
【原因②】幼少期からの「感情の扱い方」の学習不足
・怒ったらいけない
・泣いたら迷惑
・我慢しろ
・気持ちを話す場所がない
こうした環境で育つと、脳は
「感情は危険」「出さない方が安全」
と学習します。
その延長で、大人になっても
感情が“そもそも拾えない”脳のクセが形成されます。
【原因③】長年の“感情抑圧”が蓄積した結果
感情は押し込めるほど鈍くなります。
- 嫌われたくない
- 空気を乱したくない
- 良い人でいたい
- 周りに迷惑をかけたくない
こうして感情を抑え続けると、
感情のセンサーが摩耗していきます。
【原因④】多忙・過負荷で“内面を感じる余力”がない
体も脳も疲れていると、
自己モニタリング(内側を感じる機能) が低下します。
つまり、
「感じる前に、日々に追われている」
「立ち止まる余裕がゼロ」
という状態です。
【チェックリスト】あなたは“解離的鈍麻”状態か?
当てはまる数が多いほど、その可能性が高いです。
- 感情を言語化するのが苦手
- 嫌なことがあっても“無”になる
- 泣きたいのに涙が出ない
- 何に対しても興味や喜びがわかない
- 自分でも「今の気分」がわからない
- つらいことを思い出すと頭が真っ白になる
- 楽しいはずの時間を楽しめない
3つ以上 → 要注意
5つ以上 → 明確に“情動の鈍麻”が進んでいる可能性
【どうすればいい?】解離的鈍麻から抜け出す方法
① 感情を“言葉”ではなく“身体”から拾う
感情がわからないとき、いきなり言語化しようとすると失敗します。
代わりに次の質問を使います。
- 体のどこが重い?
- 呼吸は浅い?深い?
- 胸・腹・喉のうち、どこが反応してる?
身体は嘘をつきません。
② “微小な感情”を拾っていく練習をする
脳が拾えるのは「強い感情」ではなく、まずは「小さな揺れ」です。
- 0.3の違和感
- うっすらとした不快感
- ほんの少しの緊張
これを“感情の前半部分”と呼びます。
これを拾えるようになると、感情全体が戻ってきます。
③ 安心できる相手と話す(脳の社会的回復)
感情は“対話”の中で活性化する仕組みがあります。
安心できる人に
「最近、なんかよくわからないんだよね」
と話すだけで、脳が“内面モード”に切り替わります。
④ 過去の抑圧を少しずつ解凍する
無理に過去を掘り返す必要はありません。
ただし、
「感情を出すのは危険」
という過去の学習を上書きする必要があります。
・一人で泣く
・日記を書く
・小さく怒る練習をする
・嫌だったことを“嫌だった”と言ってみる
これが、脳の“感情回線”の再接続につながります。
⑤ 情報量を減らし、脳の処理負荷を下げる
SNS・ニュース・通知は感情処理の邪魔をします。
“静かな時間”を持つことは、感情回復の最速ルートです。
【まとめ】感情がわからないのは「守るため」の反応であり、壊れた証拠ではない
重要なのは次の3つです。
- 感情がわからないのは異常ではない
- 脳があなたを守っているサイン
- 小さくゆっくり“感じる練習”で回復する
あなたの感情は、ただ今は“凍っているだけ”で、
消えてしまったわけではありません。
時間をかければ、必ず戻ってきます。

