はじめに
「起きてもいないことを最悪の形で想像してしまう」
「不安が無限に広がって、気づけば未来が真っ暗になる」
こんな“ネガティブ暴走”は、多くの人が抱える悩みです。
しかしこれ、あなたの性格の問題ではありません。
脳の「予測エラー」が起きている時に、誰にでも起こりうる反応なんです。
1. 脳は常に“未来予測”をしている臓器
実は脳は「今」を生きていません。
- 次に何が起こるか
- 相手がどう反応するか
- 自分がどう感じるか
こうした未来を“予測し続ける”ことで、安全を保とうとしています。
つまり脳は本来、
「不安をゼロにするための臓器」ではなく「危険を察知するための臓器」。
だからこそ、ネガティブな情報に敏感で、リスクを優先的にキャッチします。
2. 不安が暴走する正体は“予測エラー”
脳の未来予測は、良くも悪くも「過去データ」を使っています。
- 過去のミス
- 怒られた経験
- 傷ついた記憶
- 他人の反応を読み違えた場面
- 恥ずかしかった瞬間
これらが脳内に“危険データ”として保存され、未来の予測に使われます。
その結果…
脳がこう誤作動します
「前に嫌な思いをした → 今回も同じことが起こるに違いない!」
この未来の読み違いが 予測エラー(prediction error)。
予測エラーが起きると、脳は「危ない!」と誤解して不安を過剰に発火させます。
3. なぜネガティブだけが強調されるのか?
原因は、脳の生存本能にあります。
❶ ポジティブは“安全”なので優先されない
「大丈夫」と判断した事象は、命に関わらないため処理が軽い。
❷ ネガティブは“危険”なので脳が増幅する
脳は危険を過大評価するように進化しています。
具体的には…
- 危険を過小評価 → 死ぬ
- 危険を過大評価 → ちょっと疲れるだけ
だから脳は 「疲れる方」を選ぶようにできている のです。
4. ネガティブ暴走が起きやすい人の特徴
以下に当てはまる人は、予測エラーが起きやすい傾向があります。
① マルチタスク状態が続いている
脳の処理キャパが逼迫すると、未来予測が雑になります。
② 過去の辛い経験を“未処理”のまま抱えている
記憶が危険信号として強く働く。
③ 他人軸で生きるクセがある
“相手の反応予測”ばかり行い、脳が過労に。
④ 睡眠不足・疲労が溜まっている
脳の前頭葉が弱り、冷静な判断力が低下。
⑤ 完璧主義気質
「ミス=危険」という思考モデルが強い。
5. 予測エラーを止めるための“3ステップ”
STEP1:脳に「いま安全だ」と教える
不安は危険信号なので、「いまは大丈夫」を実感させることが重要。
- 深い呼吸を5回
- 手のひらを温める
- 座り直して背筋を伸ばす
どれも「副交感神経を優位にする」効果があり、脳は危険モードを解除します。
STEP2:想像している最悪シナリオにツッコミを入れる
予測エラーの多くは“事実ではなく想像”。
だから、それをあえて言語化して検証します。
例:
「明日の会議、絶対に失敗する」
→ “その根拠は?”と自分に質問。
根拠が曖昧な場合、それは脳の暴走です。
STEP3:複数の未来を想定する(1未来→3未来へ)
悪い未来しか見えないのは、脳が「1つの未来に固着している」状態。
次のように書き換えます:
- 最悪の未来
- ふつうの未来
- うまくいく未来
この“3分割”で、脳の視野が広がり予測エラーが収束します。
6. ネガティブな未来予測を“デフォルト”にしないために
予測エラーは「脳が頑張っている証拠」。
だから責めるものではなく、整えるものです。
日常的に次を習慣にすると、不安の暴走は劇的に減ります。
- タスクを詰めすぎない
- 寝る前のスマホを控える
- 心拍数を上げる軽い運動
- 小さな成功体験を積む
- ネガティブを言語化する
- 過去の嫌な経験を棚卸しする
脳の“未来予測モデル”が更新され、心が軽くなっていきます。
まとめ
ネガティブな想像が暴走するのは、
- 性格の弱さでも
- メンタルの弱さでもなく
脳の「予測エラー」が生存本能として働いているため。
脳はあなたを守るために、少し過剰に反応しているだけです。
未来を丁寧に“上書き”していくことで、不安の暴走は確実に収まっていきます。

