はじめに

「嬉しいのか悲しいのか、自分でもよくわからない」
「気持ちを聞かれると固まる」
「本当は何を感じているのか自分でも掴めない」

こうした “感情の不明確さ” は、決して珍しいことではありません。
むしろ、現代を生きる多くの人が抱えている“心理的な疲労のサイン”です。

EQ(感情知性)の観点では、これは “感情鈍麻(エモーショナル・ヌンマネス)” と呼ばれ、
放っておくと自己肯定感の低下や人間関係の不調、意思決定の迷走につながることがあります。

この記事では、
なぜ感情がわからなくなるのか?
どうすれば回復するのか?
EQの理論を使って、ていねいに解説していきます。


【目次】

  1. 感情鈍麻とは何か?
  2. 感情がわからなくなる人の共通点
  3. 感情が“消える”メカニズム
  4. 感情鈍麻が起きると何が問題なのか
  5. EQで感情を取り戻すステップ
  6. 今日からできる「感情の輪郭を取り戻す練習」

1. 感情鈍麻とは何か?

“感情鈍麻”とは、
本来あるはずの感情の波が小さくなり、何を感じているのか認識できなくなる状態 のこと。

✔ 喜びに鈍い
✔ 怒りがわからない
✔ 悲しいはずなのに反応が薄い
✔ 「どう感じてる?」と聞かれると戸惑う

こうしたサインが表れます。

これは「冷たい人」「感受性が低い」という意味ではありません。
むしろ逆で、
心理的な負荷に耐えすぎて、感情のセンサーが疲れている状態 です。


2. 感情がわからなくなる人の共通点

EQの臨床データでは、以下の特徴がよく見られます。

① 我慢が習慣化している

小さな不快をスルーし続けると、感情のセンサーが麻痺します。

② “正解のある感情”を求めすぎる

「こう感じるべき」が強いほど、本音が見えにくくなる。

③ 常に周囲の感情を優先してしまう

他人の気持ちに合わせすぎると、自分の感情が見えなくなる。

④ 過去に感情表現を否定された経験がある

「泣くな」「怒るな」「我慢しろ」
──こうした言葉は子どもの感情機能に強い影響を与えます。


3. 感情が“消える”メカニズム

感情は「感じた瞬間に湧く」ものではありません。

EQの研究では、
感情は脳が反応を“処理する”ことで初めて意識に上がる とされています。

しかし、

  • 過度なストレス
  • 長期間の緊張
  • 心のキャパ不足
  • 表現を抑圧する習慣

これらが重なると、脳は “負荷を減らすために” 感情処理をオフにする

つまり、
あなたが鈍いのではなく、脳が守ろうとしている のです。


4. 感情鈍麻が起きると何が問題か?

① 意思決定が一気に弱くなる

人の判断の大部分は感情によって下されているため。

② 人間関係で疲れやすくなる

自分の本音が見えないと、他人に合わせるしかなくなる。

③ 自己肯定感が下がる

「自分がどうしたいかわからない」状態は、自信を奪う。

④ 心身の不調につながりやすい

感情を感じづらいと、疲れやストレスのサインにも気づけません。


5. EQで感情を取り戻すステップ

EQでは、感情の回復は次の順に行うと効果的です。

ステップ1:まず身体感覚を取り戻す

感情は身体反応から始まるため、
・肩のこり
・胸の締まり
・手の温度
こうした微細な変化に気づくのが第一歩。

ステップ2:感情に“名前をつけない”で感じる

「これは怒りだ」「不安だ」など、
ラベリングを急ぐと逆にわからなくなります。

まずは
「モヤッとしてる」
「重い感じ」
「ザワザワする」
という“質感”だけでOK。

ステップ3:小さな違和感を無視しない

感情鈍麻の人は、不快の初期サインを飛ばしがち。
違和感を拾うことがセンサーの回復につながる。

ステップ4:感情の“安全地帯”を作る

否定される環境では、感情は再び閉じてしまうので
・信頼できる人
・一人になれる時間
・安心して書けるノート
などの「守られた場」が必要。


6. 今日からできる “感情の輪郭を取り戻す練習”

以下はEQ研究で効果が確認されている方法です。

① 1日1回「今の身体の状態」を書く

例:

  • 胸が重い
  • 頭がぼんやり
  • 目が乾いてる
    これだけで感情の入口が開く。

② “微細な嬉しさ” を拾う練習

感情鈍麻は負の感情だけでなく正の感情も弱くなるため。
・温かい飲み物がしみる
・天気がいいとちょっと嬉しい
こうした小さな喜びがセンサーを再起動させます。

③ 喜怒哀楽の4つだけで自分を判断しない

人間の感情は 34種類以上あると言われており、
「4種類で分類しよう」とするほどわからなくなります。

④ 今日一番“反応した瞬間”を探す

・ムッとした
・安心した
・ソワソワした
この「反応の種」が、感情を取り戻す最短ルートです。


まとめ

感情がわからないのは、
「鈍いから」でも「弱いから」でもなく、
あなたの脳が、負荷からあなたを守ろうとしているサイン です。

感情は急に戻るものではありません。
しかし、少しずつセンサーを温めていけば、
確実に輪郭が戻り、自分を理解しやすくなります。

あなたの感情は消えていません。
ただ、疲れて休んでいるだけなのです。

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