はじめに:感情を「抑える」時代は終わった
「感情を表に出すな」
「上司は冷静であれ」
かつて、マネジメントの世界ではこうした価値観が一般的でした。
しかし、リモートワークや多様な価値観が広がる現代では、感情を“抑える上司”ほど信頼を失う時代に変わっています。
部下は「何を言っても響かない」「冷たい」と感じ、上司は「どう接すればいいかわからない」と孤立する。
その結果、チームの心理的安全性は失われ、離職や不信感が生まれます。
今、求められているのは「感情を抑える上司」ではなく、感情を“整える上司”です。
その違いを、心理学とEQ(感情知能)の観点から紐解いていきましょう。
1. 「抑える上司」は我慢する、「整える上司」は理解する
感情を“抑える”とは、自分の中で不快な感情を押し殺すこと。
怒り、焦り、不安を見ないようにし、「冷静さ」を装います。
一方で、“整える”とは、感情を認めた上で意識的に扱うこと。
「今、自分はイライラしてる。でもこの感情の裏には“期待していた”気持ちがあるな」
こうして感情の正体を理解することで、爆発せずに整理できます。
心理学ではこれを「メタ認知的感情調整」と呼び、EQの中核スキルとされています。
2. 「抑える上司」は感情を伝えない、「整える上司」は感情を共有する
感情を抑える上司は、「余計なことは言わない方がいい」と考え、
チーム内で自分の気持ちを話しません。
しかし部下からすれば、
「上司が何を考えているのか分からない」
「突然怒られるのでは…」
という不安を感じやすくなります。
整える上司は、感情を適切な形で共有します。
「正直、今の進捗は少し焦りを感じている。でも、一緒に整理して進めていこう。」
このような“感情を伴ったコミュニケーション”は、信頼を生み、チームの一体感を高めます。
3. 「抑える上司」はチームを“管理”する、「整える上司」はチームを“導く”
感情を抑える上司は、ルールやタスクでチームを動かそうとします。
一方で、整える上司は、人の感情エネルギーを理解して活かすことに長けています。
- モチベーションが下がっているメンバーには「共感」から入る
- 不安を感じている部下には「小さな成功体験」を設計する
- チーム全体が疲れているときは「雑談やリフレクション」を増やす
整える上司は、“感情もマネジメント資源”と捉えて行動します。
だからこそ、チームが安定し、成果が出るのです。
4. 感情を整える上司が実践する3つのEQスキル
① 感情を観察する力(Self-Awareness)
感情をコントロールする前に、まず「気づく」こと。
怒り・焦り・不安など、感情が生まれた瞬間をキャッチする力が、すべての出発点です。
② 感情を表現する力(Self-Expression)
EQが高い上司は、感情を「ぶつける」のではなく「表現」します。
それは弱さではなく、誠実さの表現です。
③ 感情を調整する力(Self-Regulation)
感情を整えるとは、ネガティブをゼロにすることではなく、
そのエネルギーを「次の行動」に変える力のこと。
心理学では、これを「情動的知性」と呼びます。
5. 感情を扱えるチームが強い理由
整える上司のもとでは、部下が自分の感情をオープンにしやすくなります。
これは心理的安全性の土台。
結果として、
- ミスの報告が早くなる
- 相談や共有が活発になる
- 離職率が下がる
感情が自然に流れるチームは、意思決定も早く、
人間関係のストレスが少ないため、生産性が高くなるのです。
まとめ:整える上司が、これからのリーダーのスタンダードになる
感情を抑えるリーダーは、かつての「正解」でした。
しかし今は、変化が早く、感情が揺れる時代。
その中でチームを導くには、感情を整え、扱う力(EQ)が必要です。
整える上司は、冷静さと温かさを両立し、
人の心を動かすマネジメントを実現します。
感情を扱える組織へ──「Hanasu」でEQマネジメントを実践する
EQを高める第一歩は、“話す”文化をつくることから始まります。
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- 1on1やマネジメント研修で「感情の扱い方」を体系的に学ぶ
- 組織の心理的安全性を高め、離職防止を促進
- EQスキルを育てるマネージャー向けプログラムを提供