はじめに
「最近の若手は承認欲求が強い」と感じる管理職は少なくありません。しかし、承認欲求は決して悪いものではなく、むしろ成長の原動力になり得るものです。問題は、その欲求をどうマネジメントし、成果につなげるかということ。心理学を活用すれば、承認欲求を“面倒なもの”ではなく“成長のエンジン”に変えられます。
承認欲求とは何か?
承認欲求は、人間の根源的な欲求の一つで、「他者から認められたい」という願望です。心理学者マズローが提唱した欲求階層理論でも、承認欲求は「所属と愛の欲求」の次に位置づけられています。この欲求が満たされると、自己肯定感が高まり、さらに高次の欲求である「自己実現欲求」に向かうとされています。
現代の職場で承認欲求が強調されるのは、SNSなどで「可視化された評価」に慣れた世代の特徴ともいえます。しかし、これは単なる世代特性ではなく、誰しもが持つ普遍的な欲求です。満たされなければモチベーションは下がり、満たされればパフォーマンスが向上するという点を理解することが重要です。
承認欲求が満たされないとどうなる?
承認欲求が満たされない職場では、次のような問題が起こります。
- 業務へのエンゲージメントが低下する
- 離職意向が高まる
- チーム内で不満や対立が生まれる
特に優秀な若手ほど、「評価されない=自分は成長していない」と感じやすく、結果的に早期離職や転職のリスクが高まります。
承認欲求を味方につける3つの心理学的アプローチ
承認欲求は抑えるのではなく、健全に満たす仕組みを整えることがカギです。ここでは、心理学に基づいた3つの方法を紹介します。
1. 「努力」を認めるフィードバックを取り入れる
心理学者キャロル・ドゥエックの成長マインドセット理論によれば、結果ではなく努力や工夫を認めることで、人は挑戦意欲を失わず、学習を続けやすくなります。
例:「このプロジェクトのために情報を丁寧に整理してくれて助かった」
こうしたフィードバックは、承認欲求を満たしながら、健全な成長を促します。
2. 「称賛」ではなく「具体的な承認」をする
心理学では、「よくやった」という漠然とした称賛より、「どこが良かったのか」を具体的に伝える方が効果的とされています。
例:「プレゼンで質問を想定して準備していた点が素晴らしかった」
こうした具体的な承認は、部下の自信を高め、同時に再現性のある行動を強化します。
3. 「ピア・フィードバック」を仕組み化する
承認は上司だけでなく、同僚からも得られると効果が高まります。心理的安全性の研究でも、仲間からの承認は職場満足度を大きく高めることが分かっています。週次の「ありがとう共有タイム」やオンライン上での称賛掲示板など、仕組みを導入することで、組織全体にポジティブな循環が生まれます。
承認欲求と「過剰な期待」のバランス
一方で、承認を与える際に注意すべきことがあります。それは「過剰な期待を生まない」こと。承認が「褒められるために頑張る」という外発的動機づけだけに偏ると、持続的なモチベーションにはつながりません。承認はあくまで自己効力感を育む手段であり、目的化しないことが重要です。
承認欲求を満たしつつ、成長を促す環境づくり
最後に押さえておきたいのは、承認欲求を満たすことがゴールではないということ。ゴールは、「承認を通じて、部下が自律的に成長できる状態をつくる」ことです。そのためには、次のような組織文化が求められます。
- 失敗を恐れず挑戦できる心理的安全性
- 努力と学びを評価する制度
- 承認が日常化しているコミュニケーション
こうした仕組みが整えば、承認欲求は強力な推進力に変わります。
最後に:心理学を活用して組織を強くする
承認欲求をうまくマネジメントできれば、部下の成長スピードは格段に上がります。しかし、そのためには上司個人のスキルだけでなく、組織全体での心理的安全性とコミュニケーション設計が欠かせません。
私たちが提供する「ラポトーク」は、臨床心理学をベースに、組織内のコミュニケーションを改善し、エンゲージメントを高めるためのソリューションです。また、個人向けには、オンラインカウンセリングサービス「Hanasu ハナス」で、専門家によるメンタルサポートを提供しています。
