はじめに
リモートワークとオフィスワークを組み合わせるハイブリッドワークが、多くの企業で定着しつつあります。柔軟な働き方が可能になった一方で、「社員同士の距離感が広がった」「チームの一体感が薄れた」といった声も増えています。
この状況で鍵となるのが「つながり資本」です。単なる人的ネットワークではなく、心理的な結びつきと信頼関係を指します。ハイブリッド時代に求められるのは、物理的な距離を超えたつながりをいかに築くかです。
本記事では、心理学の知見をもとに、つながり資本の重要性とその育成方法を解説します。
なぜ「つながり資本」が重要なのか?
従来、職場でのつながりはオフィスでの雑談や会議、ランチといった偶発的な接触によって自然に生まれていました。しかし、リモートワークやハイブリッドワークでは、この偶発性が失われます。
心理学では、社会的サポートがストレス軽減やエンゲージメントに大きな影響を与えることがわかっています。つながり資本が不足すると、次のようなリスクが高まります。
- チーム間で情報が分断され、意思決定が遅れる
- 孤立感からメンタル不調や離職が増える
- 創造的なアイデアやイノベーションが生まれにくくなる
逆に、強いつながり資本を持つ組織は、メンバーが互いに信頼し合い、協力し合う文化を育みます。
つながり資本を支える心理学的要素
心理学的に、つながり資本は次の3つの要素で構成されます。
1. 心理的安全性
ハーバード大学のエイミー・エドモンドソンが提唱した概念で、メンバーが「ここでは自分の意見を安心して言える」と感じられる状態です。リモートワークでは発言の機会が減りやすく、心理的安全性が低下しやすいので、意識的な設計が必要です。
2. 社会的交換理論
人間関係は「信頼」と「互恵性」に基づきます。相手を信頼し、自分の情報や感情をオープンにすることで、相手からも同様の行動が返ってくる。これが積み重なり、強いつながり資本を形成します。
3. 感情的共鳴
心理学では、感情は伝染すると言われています。ポジティブな感情はチーム全体に広がり、協力行動を促進します。一方、ネガティブな感情は孤立や分断を招くため、感情の扱い方が重要です。
つながり資本を築くための実践アプローチ
意図的なコミュニケーション設計
ハイブリッドワークでは、偶然の会話を期待できません。雑談や気軽な対話を意図的に設ける仕組みが必要です。たとえば、オンライン朝礼で「今週の一言」を共有する、バーチャルコーヒータイムを設定するなど、小さな工夫で心理的距離を縮められます。
チームゴールの共有と振り返り
「私たちは何のために働いているのか」という目的の共有は、つながり資本の核になります。目標を定期的に確認し、達成や進捗を一緒に振り返ることで、仲間意識が強化されます。
感謝と承認の文化を育む
心理学研究では、「感謝の表現」が信頼関係を強化することが確認されています。ハイブリッドワークでは特に、チャットやオンライン会議で「ありがとう」を積極的に伝えることが重要です。
デジタルツールの活用
チャットやオンラインホワイトボードなどのツールを活用し、情報共有をスムーズにすることも有効です。ただし、ツール導入だけでは不十分。大切なのは、ツールをコミュニケーション促進のためにどう活用するかという「運用設計」です。
リーダーが担う役割
リーダーは、つながり資本を育む「ファシリテーター」としての役割を果たす必要があります。
- メンバー一人ひとりと定期的に対話する
- 意見を引き出す質問を投げかける
- 失敗や課題を共有する姿勢を示す
こうした行動が、心理的安全性を高め、つながり資本を強化します。
まとめ:ハイブリッド時代の競争力は「つながり」にある
ハイブリッドワークは便利で柔軟な働き方ですが、その裏側で組織の一体感が損なわれるリスクがあります。物理的な距離を心理的な結びつきで埋めることが、これからのマネジメントの重要な課題です。
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