人材育成の現場で増える「フィードバックが当たらない問題」

「しっかりフィードバックしているはずなのに、まったく行動が変わらない」「通じていない感覚がある」——人材育成の現場で、こんな声を耳にしたことはないでしょうか。フィードバックは人の成長を支える最も重要な手段の一つですが、それがなぜか消化される事例は少なくありません。

実はその原因は「受け止める側の準備」にあります。

フィードバックのエビデンス、実は受け止め側にあり」

例えば、下輩に向けて「このプレゼンはまとまりがなくて分かりにくかったよ」とフィードバックしたとしましょう。発信者としては「何が良くなかったのか」を明確に伝えているつもりですが、受け手側が「否定された」「批判された」と受け止めれば、そのメッセージは少しも届かないことになります。

ここで重要なのは「人は評価されることに絶対的なセンシティビティを持っている」という心理学的矩形です。

自分を否定されたように感じるような内容は、たとえ構造化された有用な指摘であったとしても、受け止められないことがあります。

「受け止める準備」はどうつくられるのか

ここで考えたいのは、フィードバックを「受け止める側の準備」は、主に三つの要素で構成されていると考えられます。

1つは「予約」です。人は予期していることは受け止めやすくなります。「この場ではフィードバックをします」と予告されていれば、心理的な防衛を整えやすいのです。

2つめは「関係性」です。既に信頼関係がある相手からの言葉は、批判的に聴こえても接しやすくなります。「我々は同じ目的に向かっている」という前提があれば、受け止めのハードルも低くなります。

3つめは「メタ評価の広がり」です。一つの振る舞いではなく、これまでの努力や良い点にも相手が気づいていると感じられると、否定されたとは受けとられにくくなります。

「反応が悪い」の手前で止まることなかれ」

フィードバックをして、こちらは良かれれば反応が欲しい。しかし、受け手側に変化がなければ「意味がない」「反応が悪い」と判断してしまいがちです。しかし、その前に「今、相手は受け止める準備ができているだろうか」と考えてみることが重要です。

フィードバックを「伝える技術」として練習するだけでは不十分なのです。受け止める側がどれだけ心理的に安心できる場を持っているか、その前提に立つ信頼関係があるかどうか。

こうした視点を持つことで、フィードバックの効果を根本から変えることができるのです。

「人が動く」フィードバックの育成は一晩にして成りません。経験と知見の精寄ったサポートが必要です。

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