はじめに

創業期のリーダーにとって、ビジョンを掲げ、スピード感を持って組織を成長させることは最優先のテーマです。しかし、目の前の成果ばかりに目を向けていると、気づかぬうちに“共感力”が抜け落ち、組織内に心理的リスクを蓄積してしまうことがあります。

共感力とは、単に優しさや気配りのことではありません。心理学的には、「相手の視点に立ち、その感情を理解し、適切に対応する力」を指します。この共感力が、創業期の組織づくりにおいてどれほど重要か、なぜ見落とされがちなのかを、本記事で解説していきます。

なぜ創業期に“共感力”が求められるのか

スタートアップ創業期は、以下のような特有の環境に置かれています。

  • 人手不足で個々の負担が大きい
  • 役割やルールが流動的で、先が見えにくい
  • 常にリスクを抱えたスピード重視の意思決定が求められる

このような状況では、メンバーの不安や戸惑いが強くなりやすく、心理的に“揺らぎやすい”土壌が生まれます。

にもかかわらず、リーダーが「成果だけ」「結果だけ」にフォーカスし続けると、メンバーの不安や疲弊が見えず、やがて組織内に静かな離反やエンゲージメント低下が広がってしまうのです。

創業期にありがちな“共感力欠如”のサイン

一つ目は「成果が出ているうちは問題ないと考える」ことです。心理的リスクは、目に見えるパフォーマンスに現れる前に静かに蓄積していきます。表面上は問題がなくても、内心では不安や不満が積もっている可能性があります。

二つ目は「自分と同じ熱量を他人に求める」ことです。創業者は強い情熱を持って当然ですが、メンバーはそれぞれ動機もキャリアも異なります。そこへの共感が欠けると、「理解されていない」という孤立感を招きます。

三つ目は「ミスや弱音への厳しい対応」です。創業期はスピード重視になるため、失敗や不安の表出に対して無意識に厳しくなる傾向があります。しかし、それが繰り返されると、メンバーは本音を隠し始め、心理的安全性が失われます。

共感力マネジメントを実践するためのポイント

第一に「感情を拾う習慣をつける」ことです。

心理学的には、人は自分の感情を理解し、言語化できたときに心理的安定を感じます。1on1やミーティングでは、成果だけでなく「最近どう感じているか」「困っていることはないか」という感情に関する質問を意図的に組み込みましょう。

第二に「違和感を受け止める姿勢を持つ」ことです。

違和感やモヤモヤを口にできる組織は、健全な成長を続けられます。違和感を言われたときに「否定」や「すぐの正論返し」をせず、「そう感じたんだね」と受け止めることが、信頼関係を深める基盤になります。

第三に「リーダー自身の感情を開示する」ことです。

共感力とは一方通行ではありません。リーダー自身も「プレッシャーを感じている」「難しさを感じている」と素直に共有することで、メンバーも安心して自分の感情を表現できるようになります。

創業期リーダーが陥りやすい“心理的罠”

  • 「正しさ」だけを重視しすぎる
  • 「誰よりも働いている」という自己犠牲を押し付ける
  • 「感情より成果」という無意識の価値観を持つ

これらの罠は、短期的には成果につながることもありますが、長期的には組織文化を歪め、離職やエンゲージメント低下を招くリスクが高いことを認識する必要があります。

おわりに:共感力は創業期リーダーの武器になる

共感力は「甘さ」ではありません。むしろ、人の感情に敏感であること、適切に対話できることが、急速に変化する創業期の不確実性を乗り越える最大の強みになります。

成果を追い求めるときこそ、共感を意識する。それが、持続可能な組織成長と、強いチームづくりへの近道なのです。

ラポトークのご紹介

ラポトークは、心理学を基盤とした対話型組織開発サービスです。

  • 創業期リーダー向け共感力マネジメント研修
  • 1on1設計支援と運用サポート
  • 心理的安全性向上プログラム

を通じて、成長フェーズに必要な“人と組織の土台づくり”を支援します。

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