はじめに

現場を率いるリーダーにとって、「叱る」と「支える」のバランスを取ることは非常に難しい課題です。

叱らなければ現場が緩み、甘えが蔓延する。一方で、叱りすぎれば萎縮を招き、メンバーの成長意欲を削いでしまう。このジレンマに、多くのリーダーが悩んでいます。

この記事では、心理学の視点を取り入れながら、「叱る・支える」の適切なバランスとは何かを整理し、現場ですぐに活かせる実践的なヒントをお届けします。

なぜバランスが難しいのか?心理学的背景

リーダーシップ研究では、「タスク指向」と「人間関係指向」という二軸でリーダー行動を捉える理論があります(オハイオ研究)。

  • タスク指向:目標達成、ルール遵守、パフォーマンス向上に重きを置く
  • 人間関係指向:メンバーの感情、モチベーション、成長に重きを置く

実際のリーダーシップは、この両者を状況に応じてバランスよく使い分けることが求められます。しかし、忙しい現場ではどうしても「タスク達成」が優先されがちで、人間関係への配慮がおろそかになりやすいのです。

また、心理学では「感情伝染理論」があり、リーダーの感情表現はチーム全体に大きな影響を与えることが知られています。叱り方が強すぎると、チーム全体の雰囲気がネガティブに傾き、パフォーマンスが低下するリスクもあるのです。

“叱る”の心理学:効果的な叱り方とは

叱ることは必要です。しかし、感情任せに叱ると、逆効果になることも心理学の研究で明らかになっています。

効果的な叱り方のポイントは次の通りです。

  • 行動にフォーカスする(人格否定をしない)
  • 具体的に伝える(何が、どのように問題だったか)
  • タイムリーに伝える(問題から時間を置きすぎない)
  • 改善の期待を伝える(叱る目的は成長支援であることを示す)

たとえば、「なんでそんなこともできないんだ!」ではなく、「この作業の締め切りが遅れたことで、チーム全体の工程に影響が出た。次からは余裕を持った進行管理を意識してほしい」と伝えるべきです。

“支える”の心理学:信頼を育てる支援の仕方

支えるとは、単に優しくすることではありません。

心理的安全性を高めるために、リーダーができる支援は次のようなものです。

  • 小さな成功体験を一緒に喜ぶ
  • 本音を話せる場を意図的に作る
  • 困ったときにすぐ相談できる空気を作る
  • 成長への期待を言葉にして伝える

心理学的には、人は「自分を信じて期待してくれている人」がいるときに、最も成長意欲を高める傾向があります(ピグマリオン効果)。

つまり、叱った後こそ「君ならできる」と期待を伝えることが、成長を後押しするのです。

叱る・支えるバランスを取るための3ステップ

1. 目的を整理する

叱るときも支えるときも、「この人にどう成長してほしいのか」というゴールイメージを持つことが大切です。

2. 状況を見極める

ミスが続いているときはまず支援が必要かもしれません。慢性的なルール違反が続く場合は、毅然と叱責が必要です。状況に応じたアプローチを選びましょう。

3. 対話の習慣を作る

定期的な1on1や雑談を通じて、日頃から本音を引き出しておくことが、叱る・支える両方を機能させる土台になります。

おわりに:リーダー自身も“完璧”を求めすぎない

叱る・支えるのバランスは、常に試行錯誤です。

リーダー自身も「時に叱りすぎた」「支えきれなかった」と反省することがあるでしょう。でも、それを成長の材料にできるリーダーこそが、強いチームを育てます。

心理学を味方にしながら、自分自身にも優しく、バランス感覚を磨いていきましょう。

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