「金曜の夜は早めに寝て、土曜の昼まで寝た。それなのに、なぜか体が重い」 「休暇を取って旅行に行ったのに、帰ってきたら余計に疲れている」

ビジネスパーソンの多くが抱える「寝ても取れない疲れ」。 これを「年齢のせい」や「気合不足」で片付けてはいけません。

医学的な観点から言えば、あなたの休息方法は「処方ミス」を起こしています。 内科医のサウドラ・ダルトン・スミス博士は、「人間には7種類の休息が必要であり、多くの人は『身体的休息(睡眠)』しか取っていない」と指摘しています。

脳が疲れている時に、体を横にしても回復しません。 人間関係で疲れている時に、一人で部屋に閉じこもっても回復しません。

本記事では、あなたの疲れの正体を「7つの休息」モデルで因数分解し、今のあなたに本当に必要な「回復の処方箋」を提示します。


第1章:なぜ「睡眠」だけでは足りないのか?

私たちは疲れた時、反射的に「寝よう」と考えます。 しかし、睡眠はあくまで「身体的休息(Physical Rest)」の一つに過ぎません。

現代のビジネスパーソン、特にデスクワーク中心の人々の疲労原因の9割は、肉体労働ではなく「脳と心の酷使」です。 それなのに、肉体回復のための「睡眠」ばかり過剰摂取するのは、空腹の人に水を飲ませ続けるようなものです。一時的には紛れますが、根本的なエネルギー不足は解消されません。

必要なのは、欠乏している栄養素(休息の種類)を特定し、それをピンポイントで補給することです。 ダルトン・スミス博士が提唱する、残り6つの休息を見ていきましょう。


第2章:脳と五感を休める「精神・感覚」の休息

デスクワーカーに圧倒的に不足しているのがこの2つです。

1. 精神的休息(Mental Rest)

  • 症状: 思考がまとまらない、夜ベッドに入っても仕事のことが頭を離れない。
  • 処方箋:「ブレイン・ダンプ(書き出し)」
    • 脳は「未完了のタスク」を覚えている時にエネルギーを使います。すべて紙に書き出し、「今日はもう考えない」と脳に完了信号を送ってください。短時間の「休憩(ポモドーロ・テクニック)」を仕事中に挟むのも有効です。

2. 感覚的休息(Sensory Rest)

  • 症状: イライラする、偏頭痛がする、画面を見るのが辛い。
  • 処方箋:「刺激の遮断(Sensory Deprivation)」
    • 私たちはZoomの画面、通知音、ブルーライト、人工照明に晒され続けています。
    • 1日数分でいいので、「目を閉じる」「耳栓をする」「部屋を暗くする」。五感への入力を物理的にゼロにする時間を作ってください。

第3章:人間関係の毒を抜く「感情・社会」の休息

リーダーや管理職、気配り上手な人に必要なのがこの2つです。

3. 感情的休息(Emotional Rest)

  • 症状: 「いい人」でいることに疲れた、本音が言えない、誰も私を理解してくれない。
  • 処方箋:「役割を脱ぐ」
    • あなたは常に「頼れる上司」「良い親」を演じています。
    • 「実は辛いんだ」「今日は何もしたくない」と、弱音を吐ける相手や場所を持つこと。感情を飾らずにさらけ出すことが、唯一の回復法です。

4. 社会的休息(Social Rest)

  • 症状: 人と会うのが億劫、ランチに誘われると気が重い。
  • 処方箋:「エネルギーを奪う人との距離を置く」
    • 人間関係には「エネルギーを与える人」と「奪う人(エナジー・バンパイア)」がいます。
    • 奪う人との時間を減らし、一緒にいて素に戻れる友人との時間を増やす。あるいは、完全に一人になる時間(Solitude)を確保してください。

第4章:枯れた情熱を取り戻す「創造・霊的」の休息

「なんとなく虚しい」「やる気が出ない」というバーンアウト予備軍に必要な休息です。

5. 創造的休息(Creative Rest)

  • 症状: 新しいアイデアが出ない、問題解決能力が落ちている。
  • 処方箋:「美に触れる」
    • 美術館に行く必要はありません。夕日を見る、森を歩く、好きな音楽を聴く。
    • 重要なのは「何かを生み出そう」とせず、ただ「美しさを受け取る」ことです。アウトプット過多の脳に、インプットのシャワーを浴びせてください。

6. 霊的休息(Spiritual Rest)

  • 症状: 「何のために働いているのか分からない」、虚無感、孤独感。
  • 処方箋:「自分より大きなものと繋がる」
    • 宗教的な意味に限りません。ボランティア活動、瞑想、あるいは「コミュニティへの貢献」を感じること。
    • 自分のエゴ(自我)から離れ、より大きな目的(パーパス)の一部であると感じる時、人は深い安心感を得ます。

結論:休息とは「停止」ではなく「メンテナンス」である

多くの人は、休息を「活動の停止(何もしないこと)」だと定義しています。 しかし、正しい定義は「失われた機能の修復(メンテナンス)」です。

F1カーのピットストップで、ただ車を停めておくだけのチームはいません。タイヤを替え、燃料を入れ、ウィングを調整します。 あなたも同じです。 「今、自分がすり減らしているのはどのパーツか?」を診断し、適切なメンテナンスを行ってください。

  • 頭が重いなら、目を閉じて情報を遮断する(感覚的休息)。
  • 人疲れしているなら、一人でカフェに行く(社会的休息)。
  • 自分が嫌いになりそうなら、友人に弱音を吐く(感情的休息)。

今週末は、ただ闇雲に眠るのではなく、「自分だけの休息ポートフォリオ」を組んでみてください。 月曜の朝、「あ、本当に疲れが取れている」という驚きが、あなたを待っているはずです。

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