はじめに
「せっかく育てたのに、若手が次々に辞めていく」「本音が見えず、突然の退職に驚くばかり」「今の若手社員は何を求めているのか分からない」
人事やマネジメント層からよく聞こえてくるこのような悩み。特に若手社員の早期離職は、多くの企業にとって喫緊の課題です。
労働市場が流動化する中で、「合わなければ辞める」という選択肢は、もはや特別なことではなくなりました。しかし、企業としては、せっかく採用し、教育に投資してきた人材が早期に去ってしまうのは避けたいところ。
では、若手の離職を防ぐには何が必要なのでしょうか?キーワードは「エンゲージメント」と「心理的なつながり」です。この記事では、心理学の知見をもとに、若手社員のエンゲージメントを高めるための実践的アプローチを紹介します。
エンゲージメントとは単なる“やる気”ではない
エンゲージメントとは、「従業員が仕事や組織に対して主体的かつ情熱を持って関わっている状態」を指します。
これは単なるモチベーションや満足度とは異なります。心理学的には、仕事に没頭し、意味を見出し、成長や貢献を実感している状態が「高エンゲージメント」とされます。
特に若手社員は、「給与や安定性」以上に、「職場の空気」「成長実感」「自分の存在意義」を重視する傾向があります。そのため、エンゲージメントの要素を満たせない職場では、短期間での離職が起こりやすいのです。
若手が離職する“心理的メカニズム”とは?
若手社員が辞めてしまう背景には、以下のような心理的要因が潜んでいます。
- 自分の意見が言えない、聞いてもらえない
- 努力が認められていないと感じる
- 人間関係に孤独感がある
- 仕事の意味が見出せず、やらされ感が強い
- 将来のキャリアが見えず、不安になる
これは必ずしも「会社が悪い」「上司が悪い」という話ではありません。新卒〜若手社員は、社会人経験が浅いため、曖昧な空気や暗黙のルールに過敏に反応しがちです。
だからこそ、上司や組織側が“心理的なつながり”を丁寧に築き、安心感と成長の実感を与えることが求められます。
エンゲージメントを高める3つの心理学的アプローチ
まず取り組みたいのは、心理的な基本欲求を満たすことです。心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」では、次の3つが人の内発的動機づけを高める鍵とされています。
一つ目は「自律性」。仕事の進め方や工夫に裁量があり、自分の意思で選んでいるという感覚があるかどうかです。細かすぎる指示や過干渉は、若手の自律性を奪ってしまいます。選択肢を与える、考える余地を残す、という関わり方が重要です。
二つ目は「有能感」。成果だけでなく、プロセスや成長に対してフィードバックすることが、若手に「できるようになった」という実感を与えます。「あの時より判断が早くなったね」などの声かけが、自信と継続意欲を育てます。
三つ目は「関係性」。職場で信頼されている、誰かに受け止めてもらえているという実感は、メンタル面の安定に直結します。1on1や日々の雑談の中で、仕事以外の話にも触れることで、安心感は自然と育ちます。
本音を引き出す“対話”の習慣化がカギ
若手の離職を防ぐには、早期に“気づく”ことが重要です。しかし、若手社員は悩みを抱えていても「迷惑をかけたくない」「相談するのは甘えではないか」と考え、黙ってしまいがちです。
そこで有効なのが、1on1ミーティングや定期的な感情チェックです。形式的ではなく、対話をベースにしたコミュニケーションが重要です。
たとえば、「最近、どんなことにやりがいを感じてる?」「気になってることってある?」といった、オープンクエスチョンを投げかけることで、徐々に本音が出やすくなります。
心理学では、「アクティブリスニング(積極的傾聴)」というスキルがあります。話を遮らず、相手の言葉を繰り返したり要約しながら聞くことで、「自分の話がちゃんと受け止められている」という安心感が生まれます。
本音を引き出すには、「話す場」と「聞く姿勢」の両方がそろっていることが必要です。
エンゲージメントを高める職場づくりの第一歩
若手社員のエンゲージメントを高めるためには、制度や仕組みだけでなく、日々の“関係性”の積み重ねがカギを握ります。
- 任せて、認めて、見守る姿勢
- 本音が言える関係性と場づくり
- 成長と貢献を実感できるフィードバック
こうした工夫を通じて、若手社員は「ここにいてもいい」「自分は必要とされている」と感じることができるのです。
ラポトークのご紹介
『ラポトーク』は、心理学をベースとしたコミュニケーション支援・対話設計サービスです。若手育成や離職防止、心理的安全性の向上など、組織のコミュニケーション課題に対して、実践的なプログラムをご提供しています。
- 若手向けエンゲージメント向上プログラム
- マネージャー向け1on1トレーニング
- 組織診断+フィードバック面談設計 など
人の心に寄り添い、行動変容を促す対話を通じて、職場の空気を変えていきます。

