「せっかく内定を出したのに、辞退された」
そんな経験がある採用担当者は少なくありません。
理由を聞いても「他社に行くことに決めました」「自分には合わない気がして…」といった言葉しか返ってこない。時には「連絡が途絶える」ケースもあるでしょう。
その背景にあるのは、スキルの問題でも、企業側のミスマッチでもない場合があります。
むしろ、表面化しにくい原因として増えているのが、“自己肯定感の低さ”です。
今回は、自己肯定感が低い学生の内定辞退の背景にある心理と、企業がどのように向き合うべきかを深掘りします。
なぜ今、「自己肯定感が低い学生」が増えているのか?
自己肯定感とは、自分を認める感覚、自分に価値があると思える感覚のことです。
近年、多くの調査で、日本の若者は自己肯定感が低い傾向があることが指摘されています。
たとえば、内閣府が公表した調査(若者意識調査)では、日本の若者のうち「自分に満足している」と答えた割合は、諸外国と比べて極めて低いという結果が出ています。
要因は複数ありますが、
- SNSによる他者との比較疲れ
- 成功体験よりも“失敗回避”を優先する教育環境
- キャリアにおける「正解探し」志向の強まり
などが影響しています。
つまり、今の学生たちは、「企業に選ばれること」以上に、「自分が選んでもいいのか」という自信がないという現実があるのです。
自己肯定感の低さが引き起こす「内定辞退」という現象
表面的には、「志望順位の違い」「親の反対」「条件面のミスマッチ」といった辞退理由が挙げられます。
しかし、深層にあるのは、「この会社に入っても、自分が通用しない気がする」「迷惑をかけそうで怖い」「内定を出してもらったのに、なぜか申し訳ない気がする」といった、“不安”と“遠慮”の感情です。
このような状態では、内定を承諾することすら“負担”に感じられてしまいます。
そして、気持ちを整理しきれないまま時間だけが過ぎ、最終的に「やっぱり辞退します」となる。これは、論理的判断ではなく、感情的な決断です。
実際にあったエピソード:辞退理由の裏側にあったもの
あるBtoB企業の人事担当者が語ってくれたエピソードです。
最終面接を通過し、内定を出した学生Aさん。面接でも前向きな姿勢を見せており、人事としても「ぜひ一緒に働きたい」と考えていたそうです。
しかし、その数日後、Aさんから辞退の連絡が来ました。理由は「他社の方が自分に合っていると思った」というもの。
ところが、その後のやりとりで分かったのは、「自分にはあの会社のレベルが高すぎる」「うまくやれる自信がない」という不安感から来た辞退だったということ。
つまり、能力が足りないのではなく、「自分を信じられない気持ち」が意思決定を支配していたのです。
企業はどう向き合えばいいのか? 対応のポイント
1. 「ポジティブな言語化」を丁寧に行う
面接や面談では、「ここが良かった」「こういう強みがある」といったフィードバックを具体的に伝えることが重要です。
ただ「頑張ってるね」ではなく、
「初対面の人とも丁寧に言葉を選んで接していたね。営業職で活きると思う」
「分からないことを素直に聞けるのは、チームにとってとてもありがたい」
といった、“行動”と“価値”を結びつけた言語化が、学生の自己認識を少しずつ変えていきます。
2. 「選ばれる」だけでなく「選ぶ」視点を与える
「うちに来てほしい」と伝えるだけでなく、「あなたがどうしたいかも大事だよ」と伝えることも効果的です。
学生の多くは、「選ばれる」ことばかりを意識しており、自分が「選んでいい」立場であるという認識が薄いものです。
だからこそ、「この会社で何ができそうか、どんな風に過ごしたいか」を一緒に考えるスタンスが、対等な関係性と安心感を生み出します。
3. “内定後”のフォローが離脱を防ぐ
特に自己肯定感が低い学生にとって、内定後の期間は不安が膨らみやすい時間です。
「本当にこの会社で良かったのか?」
「内定を出してもらったけど、これから期待に応えられるか分からない…」
こうした気持ちは、放置すれば辞退につながります。
定期的な連絡、内定者同士のコミュニケーション、社員との雑談会など、心理的ハードルを下げる接点を設けることが、内定承諾率の改善に直結します。
自己肯定感の低さは“個人の問題”ではない
学生の中には、内定をもらってもなお「自分はこの会社に入っていいのだろうか」と悩む人がいます。
その気持ちは、本人の意志の弱さでも、能力のなさでもありません。
むしろ、社会や教育、情報環境が生んだ構造的な不安です。
企業ができるのは、その不安に寄り添い、言語化し、共に整理する姿勢を持つことです。
そうすることで、「ここなら自分でも頑張れそう」「この会社は自分を理解してくれそう」と感じた学生は、自らの意思で一歩を踏み出すことができます。
まとめ:内定辞退の裏にある感情を、見過ごさない
採用の現場では、「内定を出せば、あとは学生の判断」となりがちです。
しかし、特に今の学生たちには、「判断する」こと自体に不安を抱えている人が少なくありません。
だからこそ、採用担当者は「辞退された」という事象だけを見るのではなく、その背景にある“感情”を読み解く力が求められます。
企業が寄り添い、学生の心の揺らぎに耳を傾けることが、結果として内定辞退の防止につながるのです。
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