はじめに
「考えていることはあるのに、うまく言葉にできない」
「説明しようとすると、何を話したかったのか分からなくなる」
「頭の中では整理できているのに、口にすると伝わらない」
こうした“表現のもどかしさ”を抱えている人は少なくありません。
実はこれ、
性格や能力の問題ではなく、“脳の処理の特徴” で起きている可能性が非常に高いんです。
本記事では、「自分を説明する」のが苦手な人に共通する心理・脳のメカニズムをわかりやすく解説し、後半では具体的な改善ステップも紹介します。
1. なぜ「自分を説明できない」状態が起こるのか?
結論から言うと、それは “内向的処理”と“外向的表現”の速度ギャップ が原因です。
●① 内向的処理(インナーワーク)が深い
自分の中でじっくり考えたいタイプの人は、
- 情報を内側で深く処理し
- 自分の中で意味づけし
- 感情と結びつけて理解しようとする
という特性が強い傾向があります。
この“内向的処理”自体はとても優秀な能力ですが…
●② 外向的表現(アウトプット)に切り替えるのが難しい
脳の中では整理されているのに、
それを言葉という形に変換する瞬間だけ詰まる のです。
なぜなら、内向的処理と外向的表現では脳の使う回路が違うから。
- “理解する脳”は動いている
- “伝える脳”にバトンが渡らない
というズレが起きるのです。
2. 「説明が苦手な人」に共通する5つの特徴
●① 完璧に整理してから話したくなる
話す前に「全部きれいに整理しなきゃ」と思うため、言語化が遅くなります。
●② 感情と言語の接続が弱い
感情はあるのに、それを説明する言葉が見つからないタイプ。
(東洋人に特に多いと言われます)
●③ 話しながら考えるのが苦手
“話しながら整理する”より “整理してから話す”の方が自然。
●④ 伝わらなかった経験がトラウマになっている
「どうせうまく説明できない」という予期不安が表現をさらに妨げます。
●⑤ 言葉より“イメージ”で考える
脳内では鮮明なのに、言語化すると伝わりにくくなるタイプ。
3. 脳内イメージ → 言語 への変換が追いつかないことも
心理学では、
「意味記憶」と「エピソード記憶」のズレ
という概念があります。
- 頭の中では“体験”として理解している
- でも、それを“言葉”として整理するのは別作業
つまり、脳内の情報形式が違うのです。
だから、
「説明しようとした瞬間に言葉が抜け落ちる」
という現象が普通に起こります。
4. 説明が苦手な人は“相手視点”に入るのが難しい
説明とは「相手の理解に合わせて情報を組み替える作業」です。
しかし、内向的処理が強い人は
自分の理解に集中しすぎてしまい、相手の理解に思考を切り替えるのが苦手
なのです。
これは能力ではなく、「思考の方向性の癖」です。
つまり“修正可能”。
5. 今日からできる「説明上手になる」改善ステップ
STEP1:まず“自分のため”に言語化する
説明の前に、メモでいいので
- 何を言いたいか
- 何が一番大事か
- どんな背景があるか
を“自分の視点で”書き出す。
いきなり他人に説明しようとすると、脳が混乱します。
STEP2:話す順番を固定化する
これを使えば9割伝わります。
①結論
②理由
③具体例
④もう一度結論
説明が苦手な人は「どこから話すか」で迷ってエネルギーを失うため、型に当てはめると一気に楽になります。
STEP3:言葉に詰まりそうなら“一時停止”を使う
「ちょっと整理させてください」
「少し考えながら話してもいいですか?」
この2つのフレーズを使うだけで、焦りが消えます。
STEP4:小声で“予告”してから話す
脳が切り替わりやすくなります。
「今から○○について話しますね」
→ 表現モードに入るスイッチになる。
STEP5:話す場数を増やす(短くでOK)
長く話す必要はありません。
- 30秒の説明
- 1分のプレゼン
- 要点だけ共有
この“超ライトなアウトプット”を増やすと、脳が自然と外向的表現に慣れていきます。
まとめ:説明が苦手なのは才能不足ではなく“処理の特徴”
自分をうまく説明できないのは、
- 内向的処理が深い
- 言語化回路への切り替えが遅い
- イメージ優位で考えがち
- 伝わらなかった経験がある
といった “脳の特徴” が原因です。
これは“欠点”ではなく、
理解力が深いタイプに多い強みの裏返し。
適切な方法でトレーニングすれば、誰でも説明力は高められます。

