はじめに──「なんで私だけ、こんなに疲れるんだろう?」
職場で誰かがイライラしていると一気に疲れる。
相手の落ち込みを見ると、自分まで重たくなる。
こうした「感情をもらってしまう人」は、性格の問題でも気合いの問題でもありません。
実は、EQの中でも“感情同調性(エモーショナル・レゾナンス)”が強すぎるという特徴が隠れています。
1. 感情を“もらいやすい人”の3つの共通点
① 相手の表情・声色に即反応してしまう(高い感情感受性)
人の感情を読み取る力が高いこと自体は才能ですが、
同時に 「感情の受信感度が常にMAX」 の状態になりやすい。
・空気が悪いとすぐ気づく
・他人のちょっとした変化に敏感
・「なんか怒ってる?」がすぐ気になる
これは 高度な“アンテナ体質” とも言えます。
② 自分の感情より先に、相手の気持ちを優先してしまう
相手を気遣う力が強い反面、
自分の感情を棚に上げるクセがついていると、感情がオーバーフローしやすくなります。
・「今、私どう感じてる?」を見失いがち
・相手の気持ちを先読みして行動する
・怒らせないように振る舞う
これは EQ の「共感力」は高いけれど「自己認識」が弱い状態。
③“境界線”が薄い+感情同調性が強い
境界線(バウンダリー)は人間関係の線引き。
しかし、感情をもらいやすい人の場合、
境界線が弱いだけでなく、“相手の感情に共振しやすい”という体質そのものが影響します。
これは性格ではなく、脳の働きによるもの。
ミラーニューロンが相手の感情を強くキャッチし、
気づけば 「相手の感情を自分のもの」に変換してしまう のです。
2. “境界線”より深い──EQが捉える「感情同調性」とは?
感情同調性とは、
相手の感情に自動的に引き込まれる脳の働き のこと。
✔ 自動的(無意識)
✔ 素早い(0.2秒以内)
✔ 反応してしまう(理屈より先に感じる)
だから、どれだけ「気にしないようにしよう!」と思ってもムリ。
脳の仕組みレベルで、先に相手の感情が入り込むからです。
3. 感情を“もらわない”ためのEQ実践トレーニング
ここからは、感情のスイッチを切り替える具体的な方法を紹介します。
① 「これは相手の感情」とラベリングする(外在化)
感情は “外在化” するだけで距離が生まれます。
▼ 例
「これは“相手の怒り”。私は怒っていない」
「これは“職場の空気”。私の問題じゃない」
脳は “言語化された感情” を他者のものとして処理します。
これだけで感情が自分に侵入しにくくなります。
② “いま自分が感じている感情”を言語化する(自己認識)
感情をもらいやすい人は、
相手に注意を向けすぎるため 自分の情動を見失いがち。
▼ ワーク
1分だけ目を閉じて
「私はいま、何を感じてる?」
と問い、自分の感情に名称をつける。
これを習慣化するだけで、
感情の“主導権”が戻ってきます。
③ その場から物理的に距離を取る(環境バウンダリー)
精神的な線引きが難しいときは、まず物理的距離。
・席をずらす
・深呼吸して一度離れる
・場所を変える
脳科学的には「距離=刺激の遮断」。
近くにいるとミラーニューロンが常に反応し続けてしまうため、
物理距離は即効性の高いEQスキルです。
④ “自分の責任範囲”を明確化する(責任のバウンダリー)
感情をもらう人は、責任範囲を広く取りすぎがち。
▼ 自分の責任
・自分の行動
・自分の言葉
・自分の選択
▼ 自分の責任ではない
・相手の機嫌
・相手の感情処理
・相手の捉え方
この明確化ができると、
相手の感情を“預かる”ことが減ります。
4. 感情をもらいやすい人は「弱い」わけではない
むしろ逆で──
✔ 共感力が高い
✔ 人の気持ちを察する才能がある
✔ 空気読みに長けている
✔ 繊細な情報処理ができる
これは EQ の中でも 「情動感受性」と「共感性」の高さ」という立派な強み。
ただ、そのエネルギー量が多いぶん、
自分側の“受け皿”を整える必要があるだけなのです。
まとめ
感情をもらいやすい=気が弱い、ではない。
脳の仕組みとして “共感性の精度が高すぎる” だけ。
今日からできるポイントは3つ。
- 「これは相手の感情」と外在化する
- 自分の感情に名前をつける
- 距離・責任範囲を明確にする
感情同調性は制御できます。
むしろ使いこなせば、人間関係が驚くほどラクになります。

