「志望動機が薄い」「何をしたいのか分からない学生が多い」
採用担当者が選考を進める中で、もっとも悩まされることのひとつが、「就活軸が見えない学生」との出会いです。
エントリーシートを読んでも、面接で話をしても、将来やりたいことが見えてこない。入社後のビジョンを尋ねても、答えは曖昧。
「うちの会社に合うかどうか以前に、何を軸に選んでいるのか分からない」という戸惑いの声は、企業規模や業界を問わず多く聞かれます。
なぜ今、就活軸がない学生が増えているのか?
そして、企業はその状況にどう向き合うべきなのか?
本記事では、Z世代の価値観と就活行動の変化を踏まえながら、企業が取り組むべき実践的アクションを整理します。
就活軸とは何か?
「就活軸」とは、簡単に言えば、自分が就職先を選ぶうえで大事にしたい価値観や基準のことです。
たとえば、
- 「人の役に立てる仕事がしたい」
- 「専門性を高められる環境がある」
- 「若いうちから裁量がある」
- 「安定して長く働ける」
などがそれにあたります。
しかし近年、こうした軸を明確に語れる学生が減っているといわれています。なぜでしょうか?
“就活軸がない”学生が増えている3つの背景
1. 「正解探し」の就活文化が生んだ副作用
近年の就職活動では、「自分に合った会社を見つけることがゴール」であるかのような空気があります。
SNSや就活メディアには、「就活の勝ち方」や「成功するエントリーシートの書き方」があふれ、学生はそれに従って「正解を外さないように動く」傾向が強くなりました。
その結果、本音や内面と向き合う前に、形式的な自己PRや志望動機を“作る”ことに慣れてしまうのです。
本来であれば、自分の価値観を掘り下げて育てるべき「就活軸」が、空っぽのまま形だけのエントリーが進んでしまう。この「空洞化」が、学生本人にも企業側にも不信感を残す要因となっています。
2. 多様化した価値観と、明文化の難しさ
Z世代の学生たちは、かつての「年功序列」「大企業志向」ではなく、「自分らしく働けるか」「環境や人間関係の良さ」「働きすぎたくない」など、より主観的で感情ベースの価値観を重視する傾向にあります。
しかし、これらの価値観は「仕事にどう結びつくか」を言語化するのが難しく、本人も明確に言語化できないまま“なんとなく不安”という状態になってしまうのです。
つまり、「軸がない」のではなく、「言葉にできていない」だけ、というケースが多く存在しています。
3. 情報過多と、選択疲れ
学生たちは、インターン、就活サイト、口コミ、OB訪問、SNSなど、膨大な情報にさらされています。
本来、就活軸は「選択のための基準」になるはずですが、情報が多すぎるがゆえに、“軸を決めること”自体がプレッシャーになっているという側面もあります。
「何を大事にしたいかを決めるのが難しい」
「他の人と比べて、自分だけ見つけられていない気がする」
このような状態では、自己理解が進む前にエントリーや面接に臨むことになり、結果として企業から「軸がない」「意欲が感じられない」と判断されてしまうのです。
企業が取るべき3つの行動
“就活軸がない”学生をただ否定するのではなく、企業側が歩み寄り、引き出し、支援する姿勢が今後の採用には不可欠です。
以下、実践可能な3つのアプローチを紹介します。
1. 「選ばれるため」ではなく「選ぶ力を育てる」発信を
企業説明や採用コンテンツは、企業の魅力をアピールする場であると同時に、学生が自分にとって何が大事かを考える“鏡”にもなります。
一方的に「うちにはこんな制度があります」「ここが魅力です」と押し付けるのではなく、
- 「こういう人が向いている」
- 「こんな価値観を持っている人が活躍している」
- 「こういう人には合わないかもしれない」
といった、“見極めのヒント”を発信することで、学生自身が就活軸を形成するサポートになるのです。
2. 面接で“深堀りする力”を見せる
就活軸が曖昧な学生でも、話を丁寧に聞いていくと、そこには必ず「小さな気づき」や「大切にしていること」が見えてきます。
- 「なぜそのサークルを選んだの?」
- 「どうしてその時、そう思ったの?」
- 「その経験から何を学んだ?」
といった、“問いかけによって本人の軸を引き出すスタンス”は、選考でありながら、学生にとって「自己理解のきっかけ」になります。
このような面接は、単なる評価ではなく、学生との信頼構築と企業理解を深める重要なプロセスとなります。
3. インターンやイベントで“軸を作る体験”を提供する
「就活軸が見つからない」状態の学生には、机上の情報収集よりも、「実際にやってみる」ことが有効です。
たとえば、
- 職種別ワークショップで“向いている”を体験
- 社員との対話で価値観の違いを実感
- チームでの仕事体験で“働く自分”を想像する
こうした「体験ベース」のコンテンツは、学生の自己理解を助け、結果的に企業への関心や志望理由の具体化にもつながります。
まとめ:「就活軸がない」は、否定ではなく対話の入り口
今の学生たちは、単に怠惰なわけでも、考えていないわけでもありません。
むしろ、「間違いたくない」「自分に合う環境を真剣に探したい」という思いがあるからこそ、慎重で、確信が持てない状態に陥っているのです。
企業は、「就活軸がない」と切り捨てるのではなく、その曖昧さに寄り添い、言語化を手助けするパートナーとしての姿勢が求められています。
「学生の自己理解が深まる」プロセスを用意できる企業こそが、これからの採用市場で選ばれていくのではないでしょうか。
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