はじめに
子どもたちを支える学校・保育の現場では、教師や保育士、スタッフ同士の「相談できる関係性」が重要な鍵となります。
しかし現実には、「忙しすぎて相談する余裕がない」「気軽に話せる雰囲気がない」「相談したことで評価が下がるのではと不安」という声も聞かれます。安心して相談できる関係性がないことは、現場のストレス増大やミスの温床になりかねません。
この記事では、心理学の視点から、学校・保育現場における“安心して相談できる関係性”を築くためのポイントを探っていきます。
なぜ相談しにくくなるのか?心理的リスクの正体
1. 心理的安全性の欠如
エイミー・エドモンドソンによる「心理的安全性」の概念によれば、失敗や疑問を口に出しても不利益を被らないという確信がないと、人は相談をためらうようになります。
- 「こんなことを聞いたら能力がないと思われるのでは」
- 「余計なことを言ってチームの空気を壊したらどうしよう」
こうした不安が、相談へのブレーキになります。
2. 忙しさによるコミュニケーション断絶
教育・保育現場は慢性的な忙しさに追われがちです。心理学的には、ストレス状態では自己防衛的になり、他者との関わりを避ける傾向が強まることが分かっています(ストレス理論)。
3. 評価への恐れ
相談=弱さの表れと受け止められる文化があると、特に若手や新人は「評価が下がるのでは」と不安になり、問題を抱え込んでしまいます。
安心して相談できる関係性を築くための心理的アプローチ
1. 相談のハードルを下げる日常会話の工夫
相談しやすい空気は、特別なミーティングだけで作られるものではありません。
- 日々の「最近どう?」という声掛け
- 小さな雑談の中で悩みを拾う
- 何気ない頷きや共感のリアクション
これらが積み重なることで、相談への心理的ハードルは確実に下がっていきます。
2. 相談をポジティブに捉える文化を育む
相談することは「成長意欲」や「チーム貢献」の表れである、という価値観を意図的に発信しましょう。
たとえば、
- 「早めに相談してくれて助かった」
- 「一緒に考えよう」
といったフィードバックを積極的に行うことが有効です。
3. 聴く側の態度を整える
心理学では「傾聴」の重要性が強調されています。ただ話を聞くだけでなく、
- 相手の言葉を遮らない
- 判断やアドバイスを急がない
- 気持ちに寄り添いながら聞く
といった態度が、安心感を育みます。
4. 小さな成功体験を共有する
「相談したら問題が早期に解決できた」「話したことで気持ちが楽になった」
こうしたポジティブなエピソードを意識的に共有し、相談することの価値を可視化しましょう。
リーダー層に求められる役割
- 自分から悩みや困りごとをオープンに話す(ロールモデルとなる)
- ミスや問題が起きたとき、責めるよりも「一緒に考えよう」のスタンスを示す
- 相談に対して即レスポンスを返す(放置しない)
これらの行動が、現場全体の心理的安全性を押し上げます。
おわりに:相談し合える現場は、強い現場
安心して相談できる関係性は、単なる“仲良しグループ”を作ることではありません。
それは、
- 子どもたちの安全を守るため
- 現場のストレスを軽減するため
- 教育・保育の質を高めるため
に欠かせない、組織の「強さ」そのものです。
心理学の知見を活かして、誰もが安心して声を上げられる現場づくりに、一歩踏み出していきましょう。
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