はじめに
営業チームを率いるマネージャーやリーダーにとって、「成果を出すために行動量を増やせ」「モチベーションを維持させろ」というミッションはつきものです。しかし、現場では「言っても動かない」「モチベーション管理が難しい」「すぐ落ち込むメンバーが多い」といった悩みも絶えません。
実は、営業パフォーマンスには「感情」と「行動」が密接に関わっています。そして、そのマネジメントに心理的な視点が欠けていると、表面的な行動量だけを追い求めるマネジメントになり、チームの疲弊を招きやすくなります。
この記事では、心理学の知見を踏まえながら、営業チームを本質的に変えるための「感情と行動のマネジメント」について解説します。
なぜ営業チームは「行動量」だけでは変わらないのか?
営業活動は単なる作業ではありません。人間関係の構築、断られることへの耐性、自己効力感の維持など、高度な感情労働が求められます。
心理学的には、行動は感情に大きく左右されることが分かっています(感情-行動モデル)。つまり、
- モチベーションが下がると行動量が減る
- 自信を失うとチャレンジ行動が減る
- 疲弊感が高まると、努力の質が低下する
といった現象が起こるのです。
行動量を求める前に、まず感情面を適切にマネジメントすることが、営業チームを根本から強くするカギになります。
営業チームに潜む心理的リスクとは?
1. 成果主義プレッシャーによる燃え尽き
短期的な数字だけを追い続ける環境では、自己価値が「売上=自分の存在価値」と結びつき、成果が出ないと自己否定感に陥りやすくなります(自己価値理論)。
2. 拒否体験による自己効力感の低下
営業は断られることが日常です。心理学では、拒否体験が繰り返されると「どうせ無理だ」という学習性無力感に陥りやすいことが示されています。
3. チーム内の比較によるモチベーション低下
トップセールスとの比較により、自己肯定感を損ない、「どうせあの人には勝てない」と諦めるメンバーが出てくるリスクもあります。
感情と行動をつなぐマネジメントの実践ポイント
1. 成果プロセスへのフォーカス
結果だけでなく、
- どんな工夫をしたか
- どんなチャレンジをしたか
- どんな小さな進歩があったか
といったプロセスを承認することで、自己効力感を育てることができます。
2. ポジティブ感情を意図的に育む
ポジティブ心理学の研究では、ポジティブな感情体験が創造性やレジリエンス(回復力)を高めることが分かっています。
- 小さな成功をチームで共有する
- 面白かったエピソードを雑談でシェアする
- 感謝や称賛を日常的に表現する
こうした取り組みが、行動量だけでは引き出せないパフォーマンス向上に繋がります。
3. リーダー自身の感情マネジメント
リーダーの感情はチームに伝染します(感情伝染理論)。
- 焦りや怒りをメンバーにぶつけない
- 困難に直面したときこそ、冷静さと希望を示す
といったリーダーシップが、チーム全体の感情状態を安定させます。
4. メンバーごとの心理的ニーズを理解する
一人ひとり、
- 承認欲求が強い人
- 成長実感を求める人
- チャレンジへの不安が強い人
など、心理的なニーズは異なります。メンバーごとにアプローチを微調整することが、モチベーションマネジメントの精度を高めます。
営業チームの心理的安全性を高める工夫
- 「失敗してもいいからチャレンジしよう」というメッセージを繰り返し伝える
- 失敗事例も学びとしてポジティブに共有する
- 異なる強みを持つメンバー同士のコラボを推奨する
これらを地道に積み重ねることで、挑戦し続ける営業チームが育ちます。
おわりに:感情を制する者が、行動を制する
営業パフォーマンスを高めるためには、行動だけを管理するのでは不十分です。
感情という“見えない資源”に働きかけるマネジメントこそが、行動を引き出し、成果を持続的に生み出す原動力になります。
心理学の知見を活かし、感情と行動を両輪でマネジメントできるリーダーを目指しましょう。
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