導入
● 本ハンドブックの目的
- このハンドブックは、従業員の業績や能力、行動を公平かつ客観的に評価するためのガイドラインとなるものです。評価者としての役割を果たす皆様が、一貫性を持った評価を行い、被評価者への有意義なフィードバックを提供するためのサポートツールとして作成しました。
● 人事評価制度の背景・目的
- 全社の指針を個人目標に落とし込み成果や行動に対して報いるため
評価の基本
● 客観性の確保
- 定義
- 客観性とは、個人的な偏見や先入観を排除し、事実や実績を基にして評価を行うことを指します。
- 実践方法
- 事前に評価基準や指標を設定し、それを参考に評価を行う。(目標設定)
- 複数の情報源や視点を取り入れることで、一方的な見解に偏らないよう努力する。(360°評価の活用)
- 評価面談時には、具体的な事例やデータを元にフィードバックを提供する。
● 公平性の確保
- 定義
- 公平性とは、全ての被評価者を同じ基準で評価し、特定のグループや個人に偏りがないようにすることを指します。
- 実践方法
- 同じ部門や業務内容の者で評価にばらつきが出ないようにすり合わせを行う。
- 評価者間での情報共有やミーティングを定期的に行い、評価の一貫性を保つ。
- 評価結果についての透明性を確保し、不明瞭な点や疑問には迅速に対応する。
● 透明性の確保
- 定義
- 透明性とは、評価の方法、基準、結果を明確にし、被評価者がその理由や背景を理解できる状態を指します。
- 実践方法
- 1on1の中で期待値のすり合わせを行う。
- 評価結果のフィードバックは具体的かつ明確に伝える。
- 評価に関する疑問や不明点はオープンに受け付け、適切に説明・対応する。
● フィードバック
- 定義
- フィードバックとは、被評価者の成長や改善を促すための前向きで建設的な意見や提案を指します。
- 実践方法
- フィードバックは具体的な事例やデータに基づいて伝える。
- 改善点や課題だけでなく、良い部分や成功例もしっかりと認める。
- 評価者としての視点だけでなく、被評価者の立場や状況を考慮し、共感的なコミュニケーションを心掛ける。
評価期間・サイクル
○ 評価期間の定義
- ■ 上半期評価期間例
- 4月1日~9月30日
- ■ 下半期評価期間例
- 10月1日~3月31日
- ■ この期間内での従業員の成果貢献、行動、その他の評価項目に基づいて、総合的に評価を実施します。
○ 評価のタイミングとサイクル
- 上半期評価
- 自己評価提出期間: 10月中
- 被評価者はこの期間中に自己評価シートを完成させ、部門長や評価者に提出する。
- 360°評価実施期間: 10月中
- 被評価者にも相談した上でメイン評価者が最終選定したメンバー複数名に対して評価を依頼し、Google Form等で回答
- メイン評価: 10月中
- 評価者が「評価案1st」を作成し、担当部門長に提出
- 「評価案1st」を参考に、部門長が「評価案2nd」を作成し、部門責任者に提出
- 必要に応じて、上長と話す
- 最終評価シート提出: 10月中
- 評価者/部門長は最終的な評価を確定させ、HRへ評価シートを提出する。
- 評価面談期間: 10月の第4週~11月の第1週
- 評価者は被評価者との面談を行い、評価内容やフィードバックを共有する。
- 自己評価提出期間: 10月中
- 下半期評価
- 自己評価提出期間: 4月中
- 被評価者はこの期間中に自己評価シートを完成させ、部門長や評価者に提出する。
- 360°評価実施期間: 4月中
- 被評価者にも相談した上でメイン評価者が最終選定したメンバー複数名に対して評価を依頼し、Google Form等で回答
- メイン評価: 4月中
- 評価者が「評価案1st」を作成し、担当部門長に提出
- 「評価案1st」を参考に、部門長が「評価案2nd」を作成し、部門責任者に提出
- 必要に応じて、上長と話す
- 最終評価シート提出: 4月中
- 評価者/部門長は最終的な評価を確定させ、HRへ評価シートを提出する。
- 評価面談期間: 4月の第4週~5月の第1週
- 評価者は被評価者との面談を行い、評価内容やフィードバックを共有する。
- 自己評価提出期間: 4月中
評価項目と基準
● 成果貢献/行動を評価していきます。
○ 成果貢献に対する評価
目的
- 個人の業務遂行における成果と組織への具体的な貢献度を評価します。
○ 行動に対する評価
目的
- 組織の掲げる価値や理念(value)を日々の業務や態度においてどれだけ体現しているかを評価します。
○ 総合評価
■ 基準と具体的事例
- 期待を大きく上回る
- 事例
- 新しいプロジェクトを提案し、それが組織の収益に大きく寄与。
- 組織のvalueを高度に体現し、そのvalueを強化する活動や取り組みを行っている。
- 組織のvalueに基づいて新しいイニシアティブやワークショップを自発的に開催。
- 事例
- 期待を上回る
- 事例
- 割り当てられた業務の範囲を超えて、追加の業務やプロジェクトにも貢献。
- 日常業務の中で組織のvalueを積極的に体現し、他のメンバーにも影響を与える。
- チームメンバーとのコミュニケーションで組織のvalueを意識的に取り入れ、励ましや指導を行う。
- 事例
- 期待通り
- 事例
- アサインされたタスクやプロジェクトを期限内に適切に完了。
- 基本的な業務の中で組織のvalueを適切に体現した。
- 与えられたタスクやプロジェクトを組織のvalueに則りながら遂行。
- 事例
- 期待を下回る
- 事例
- 何らかの理由でタスクの遅延が生じ、部分的なサポートが必要。
- 組織のvalueの体現が不定期で、一貫性が欠けている。
- ある時はvalueを実践するが、別の時やシチュエーションではそれを忘れてしまう。
- 事例
- 期待を大きく下回る
- 事例
- 与えられた業務の大部分に対して進捗が見られず、大きな遅延や問題が生じている。
- 業務において組織のvalueの体現がほとんど見られない。
- 組織のvalueに反する行動や判断を繰り返し行っている。
- 事例
評価のステップ
○ 事前準備
評価の意義と重要性を理解し、評価に必要な情報や資料を整える。
- 具体的な手順
- 評価ツールやフォームの確認。
- 評価期間中の主要な業績、成果、行動のリストアップ。
- 既存のフィードバックやメモ、報告書などの確認。
○ 自己評価
被評価者自身の成果を自己評価させる。
- 具体的な手順
- 被評価者が自己評価シートを記入。
- 自己評価を提出してもらいレビューする。
- 上司/部門長によるコメントをする。
○ 360°評価
行動をファクトベースでキャッチする。
- 具体的な手順
- 被評価者との業務上関わりがあったメンバーからのフィードバックや意見を集約する。
○ 評価者による評価ドラフト
被評価者の成果を客観的に評価し、評価者の視点からのフィードバックを整理する。
- 具体的な手順
- 自己評価や360°評価を参考に、評価者が評価ドラフトを作成する。
- 具体的な事例や根拠をもとに評価を行う。
○ 評価会議
事業部長/役員が事前に提出された評価をレビュー
- 全メンバー分コメントする必要はない
- 必要に応じて、上長からもコメントバックする
- 評価会議にて、事業部長/役員が評価の最終決定を行う
- 基本的には、上長と部門長の評価案を尊重し、疑義があるメンバー分のみ議論する
- 等級 / 給与を併せて決定する
○ 評価フィードバック面談
被評価者との面談を行い、評価結果を共有し、フィードバックや意見交換を行う。
- 具体的な手順
- 面談の日程を予約。
- 評価結果の共有と具体的なフィードバックをする。
- 被評価者の強みや成果を称賛し、モチベーションを向上させる。
- 改善が必要な部分については具体的なアクションプランを検討する。
- 次期の目標設定やアクションプランの検討を行う
評価の際に気を付けるポイント
○ 評価のバイアスに注意!
評価バイアスは、評価者が被評価者の成果や行動を公平に評価しづらくなる偏見や先入観を持つことを指します。これは意図的でない場合が多く、評価者自身が気づかないうちに発生することが多いです。
○ 主な評価バイアスの例
- 過去の功績バイアス
- 過去の特定の成功や失敗に固執して、現在の成果を公平に評価できない状態。
- ハロー効果
- ある特定の良い点(または悪い点)に目が行き、その影響で全体の評価が高く(または低く)なる現象。
- 類似性バイアス
- 評価者と似た性格や価値観を持つ被評価者を高く評価してしまう傾向。
- 最近効果
- 評価期間の終わり近くの行動や業績しか覚えていないため、それを基に全体を評価してしまう傾向。
○ バイアスを避けるための対処法
- 意識的に自己反省をする
- 自分自身のバイアスや偏見を定期的に意識的に振り返り、それを是正しようとする態度が必要。
- 具体的なファクトを集める
- 評価の際には具体的な事例や証拠を基にして判断を行い、感じた印象だけで評価を下さないようにする。
- 360°評価の活用
- 複数の立場からのフィードバックを取り入れることで、一方的なバイアスを緩和する。
フィードバックの実施時に意識すること
○ フィードバックの重要性を理解する
フィードバックは、被評価者の成長を促進する重要な手段です。適切なフィードバックは、被評価者が自身の強みや改善点を理解し、それに対する行動を起こす助けとなります。
○ コンストラクティブなフィードバックを実施する
- 具体的であること
- 抽象的なフィードバックよりも、具体的な事例や状況を基にしたフィードバックをすることで納得感の醸成につながります。
- ポジティブな点を先に伝える
- フィードバックを始める際、まず被評価者の良い点や成功した点を挙げることで、受け取る側の受容性を高めることを意識します。
- 改善点には提案を添える
- 改善が必要な点を指摘する際は、どのように改善すればよいか具体的な提案も一緒に行うことが望ましい。
- 感情を排除する
- フィードバックは客観的な事実に基づいて伝えるべきであり、評価者自身の感情や好みを混入させることはできる限り避けましょう。
- 双方向のコミュニケーションを意識する
- フィードバックは一方通行のものではなく、受け取る側の意見や感じたことも大切にするべきです。一方的に話していないか意識しながらコミュニケーションを取るように心がけてください。
○ 被評価者とのコミュニケーションのポイント
- 伝える場所に配慮する
- フィードバックはプライベートな環境で、他の人の耳に入らないように伝えることが望ましい。
- 傾聴する姿勢を見せる
- フィードバックを受けた後の被評価者の意見や感想に耳を傾け、理解しようとする姿勢が必要です。この人になら相談しても話を聞いてくれると思ってもらうことが重要です。
- 非言語的なコミュニケーションに注意する
- 身振り手振りや表情など、言葉以外のコミュニケーションも被評価者の感じることに影響を与えるため、注意が必要です。無意識に相手に対してプレッシャーを与えてしまうこと(貧乏ゆすり等)があるので注意しましょう。
- フィードバックの受け入れを強制しない
- 被評価者がすぐにフィードバックの内容を受け入れられない場合もあります。そのような場合は、時間を置いて再度話し合うことを提案するなど、柔軟な対応が求められます。
評価後のフォローアップ
評価結果を元にした目標設定・キャリアプランの設計を実施
具体的な行動計画の作成
- 評価結果をもとに、半期の目標を設定する。
- 各目標に対して、達成するための具体的な行動やステップを明記することを意識する。
キャリアプランの策定
- 被評価者の強みや弱みを明確にし、それを活かすキャリアの方向性を一緒に考える。
- 現在のスキルセットと将来のキャリアの方向性とのギャップを確認する。
- 必要なスキルや知識を身につけるための教育・トレーニングを提案し、サポートするように心がける。
モチベーション維持・向上のための取り組み
定期的な1on1の実施
- 被評価者の目標に対しての進捗状況や感じていること、悩みなどを共有し、サポートを行う。
定期的なミーティングを通じて、被評価者が持続的にモチベーションを維持・向上させることができる環境を作る。
成長の機会の提供
- 新しいプロジェクトやタスク、責任のある役割など、被評価者が成長する機会を提供する。
- これにより、被評価者が新しい挑戦を受け入れ、自己実現を追求する意欲を高めることができる。
フィードバックの継続
- 評価だけでなく、日常的な業務の中でもポジティブなフィードバックを定期的に伝えることで、被評価者のモチベーションを維持し組織効力感の向上に努める。
以上、誰もが悩むであろう評価に関してまとめてみました。こちらを参考に適切な評価実施をしていきましょう。