はじめに
「最近の若手は何を考えているのかわからない」「注意するとすぐに落ち込む」「自分の時代とは価値観がまるで違う」——そう感じたことがある方は少なくないはずです。
いわゆる“ゆとり世代”や“Z世代”と呼ばれる若手社員。彼らの育った環境や価値観は、従来の世代とは大きく異なり、その違いが職場でのコミュニケーションや育成における“すれ違い”を生むことがあります。
しかし、こうした違いを“ギャップ”として片付けてしまうのではなく、心理学的な視点から理解することで、Z世代の本音に迫り、そのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になります。
本記事では、Z世代の特徴と彼らに効果的なアプローチ方法を心理学の知見とともに解説し、職場でのよりよい関係性の築き方を提案します。
Z世代は“内発的動機づけ”を重視する世代
Z世代(1990年代後半〜2010年前後生まれ)は、情報にあふれたデジタル環境の中で育ちました。彼らは“知識を得る”こと自体に希少性を感じず、「なぜそれをやるのか」という意味づけや納得感を重視します。
心理学的にいえば、これは「自己決定理論(Self-Determination Theory)」でいう“内発的動機づけ”の要素が強い世代です。
たとえば、「やれと言われたからやる」という理由では動きません。「この仕事が自分にとってどんな価値があるのか」「誰の役に立つのか」が明確になることで、意欲的に動く傾向があります。
そのため、上司や先輩は、業務を任せる際に「背景」「目的」「意義」を丁寧に伝えることが重要です。
承認欲求の形が変化している
Z世代はSNS文化の中で育ってきた影響もあり、「認められたい」という欲求を強く持ちつつも、その表現が控えめで間接的です。
たとえば、「褒めて伸ばす」は有効ですが、大げさに賞賛されることには逆に居心地の悪さを感じる人もいます。
心理学でいうと「自己効力感(Self-Efficacy)」を高めるには、適切なタイミングと具体的な行動に対するフィードバックが重要です。「この資料、内容がよく整理されていて助かったよ」といった“行動に基づく承認”がZ世代には特に響きます。
“心理的安全性”を重視する傾向
Googleの調査でも明らかになったように、チームパフォーマンスに最も影響を与えるのは「心理的安全性(Psychological Safety)」です。
Z世代は、失敗や意見の相違を過度に恐れる傾向があります。これは、小学校から“空気を読む力”や“他者との調和”を重視されて育ってきた背景があります。
そのため、「質問していいんだよ」「途中で間違えても大丈夫」という“安心できる雰囲気”を作ることで、彼らの力が発揮されやすくなります。
また、「完璧を求められている」と感じると委縮してしまうため、失敗に対して寛容な姿勢を見せることも大切です。
Z世代は“共創志向”のチームプレイヤー
一見、個人主義的に見えるZ世代ですが、実際には“共創”を重視する協調的な側面があります。
心理学者マズローの欲求階層でいえば、「所属と愛の欲求」や「承認欲求」が満たされた上で、「自己実現」に向かおうとする性質が強いのがこの世代。
つまり、孤立させずに“チームの一員”としての役割を明確にしたうえで、「自分だからこそできること」に気づかせる関わりが、やる気を引き出すカギとなります。
「君のこの視点、他のメンバーにはなかったから助かったよ」など、独自性を認める言葉が効果的です。
Z世代のポテンシャルを引き出すための3つのアプローチ
✅ 1. “Why”を伝える習慣をつける 背景や意義を共有することで、納得感と行動力が高まります。
✅ 2. 小さな成功体験を積ませる 難しすぎず、成功しやすいタスクを用意し、自己効力感を高めましょう。
✅ 3. 安心して話せる関係性を意識する 雑談や声かけを通じて、「話しかけやすさ」が心理的安全性の土台となります。
おわりに:違いを理解し、力に変えるリーダーシップへ
Z世代は決して“扱いづらい世代”ではありません。
彼らの価値観を「理解できない」と片付けるのではなく、背景を知り、接し方を変えることで、その柔軟さ・創造性・共創力は、職場にとって大きな武器になります。
リーダーや先輩社員が、心理学の視点を取り入れた関わり方をすることで、Z世代は一層力を発揮するようになるでしょう。
今こそ、“違い”を“可能性”に変える関係性のデザインが求められています。
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