「言われた通りにやっていればいい」とは、もう通用しない
ある企業の人事担当者はこう漏らしました。
「ちゃんと説明したつもりだった。でも、“納得できなかったから辞めます”と言われてしまって……」
職場において「納得感」は、かつては「理想」に近いものでした。
けれども今、多くの若手社員、とりわけZ世代にとってそれは**“最低条件”**になりつつあります。
上司や先輩が「なぜこれをやるのか」「なぜこの方法なのか」「なぜ自分がそれを担当するのか」といった“理由”を示さずに指示だけを出す状態に対して、
彼らは静かに違和感を抱き、やがては職場から離れていきます。
なぜ、「納得感のない指示」が離職を引き起こすのか。
そして、企業やマネジメントはどう向き合うべきか。
その構造と対応策を解説します。
若手が「納得感」を求めるようになった背景
1. 「選択できる自由」を当たり前に持っている
Z世代は、生まれたときから情報と選択肢に囲まれて育ってきました。
- 自分で調べて、納得してから買う
- SNSで情報発信も自己表現も自由
- キャリアも副業も複業も、自分次第
こうした環境の中で育った彼らにとって、「一方的に決められる」こと自体がストレスなのです。
2. 「意味のない努力」に価値を感じない
昭和・平成の世代では、「とにかくやれ」「数をこなせ」「苦労は買ってでもしろ」といった“根性論”が通用しました。
しかし今の若手は、「意味がわからない努力」は“無駄”と感じやすく、拒否感を抱きます。
つまり、「やること」だけでなく「なぜやるのか」「何につながるのか」がないと、
心が動かないし、動けないのです。
3. 上下関係より「対等な関係性」を求める
Z世代は、年齢や肩書きよりも「フラットな人間関係」に価値を置く傾向があります。
- 指示があっても、理由がなければ納得しない
- 上司の論理が通っていなければ、冷めた目で見る
- 対話が成立しないと、「この会社は合わない」と感じる
つまり、単に“優秀なマネージャー”であるだけでは足りず、“関係性の質”まで問われる時代になったのです。
納得感のない指示が離職を招く構造
1. 「自分の意見は尊重されない」と感じる
上司から「とりあえずこれやっといて」と投げられる。
相談しても「そういうものだから」と言われる。
そうした体験を重ねた若手社員は、「ここでは自分の考えは価値がないのかもしれない」と感じ、やがて自己効力感を失っていきます。
2. “やらされ感”が蓄積すると、モチベーションが枯れる
何をするにも、上からの指示。
提案しても通らず、改善の余地もない。
そうした中では、自分の仕事に主体性を感じることができず、熱量は低下していきます。
「このままじゃ、自分の成長が止まる」
「ここにいても、自分らしく働けない」
その感情が、静かで確かな“退職理由”になるのです。
3. 本音を言えない関係が、不信感を育てる
納得できないことがあっても、聞きづらい。
何を言っても否定されそうで、言葉を飲み込む。
そうした状態が続くと、「この上司は信用できない」→「この会社も信用できない」へと不信感が連鎖します。
“納得感のあるマネジメント”に必要な3つの視点
①「理由から伝える」を徹底する
指示を出すとき、まず「やるべきこと」を伝えていませんか?
それでは、若手は“作業指示”としか受け取れません。
- なぜこの仕事が必要なのか
- どうしてこのタイミングなのか
- どんな価値や期待があるのか
背景や目的を丁寧に伝えることで、仕事が“意味を持った行動”に変わります。
② 一方的ではなく、対話の中で指示する
「納得感」は、説明だけで生まれるものではありません。
“納得できるプロセス”があって初めて醸成されます。
- 「このやり方でどう思う?」と問いかける
- 「他にアイデアある?」と余白を与える
- 「迷ってる部分がある」と上司自身も開示する
こうした“対話型のマネジメント”が、指示の受け取り方を大きく変えるのです。
③ 納得していなさそうな顔に、気づけるか
- 表情が硬い
- 相づちが浅い
- 目を合わせない
こうした“違和感”を見逃さず、
「どう?納得いってる?」と聞けるかどうかが、信頼を深める分岐点になります。
マネジメントは「伝えたか」ではなく、「伝わったか」。
相手の表情を読み取る力もまた、大切なスキルです。
まとめ:「納得」はコストではなく、投資である
納得感のあるマネジメントには、たしかに時間と手間がかかります。
けれどもそれは、離職という“高すぎる代償”を防ぐための最も有効な先行投資です。
- 時間をかけてでも、意味を伝える
- 多少非効率でも、対話を挟む
- 言いにくいことでも、フラットに聞く
その積み重ねが、若手にとっての「ここで働きたい」という確かな感覚につながるのです。
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