「この学生、良かったですよね?」選考後に残るモヤモヤ
ある企業の新卒採用チーム。
一次面接後のフィードバックで、複数の面接官が「この学生、いいね」と高評価をつけていた。
しかし最終的に、人事責任者の一言で不合格に。
「なんか合わなそうだよね」
結果として、その学生は他社の選考に進み、後にその企業でMVPを受賞するまでに成長。
元の採用担当者はこうつぶやいた。
「優秀だったのに、なんでうちでは通らなかったんだろう」
このような、“優秀なのに落とした”という経験は、どの企業でも一度はあるのではないでしょうか。
そしてその背景には、選考設計のなかで「カルチャーフィット(文化的な相性)」の見極めが曖昧になっているという課題が潜んでいます。
スキル偏重の選考が生む「取りこぼし」
多くの企業は、選考プロセスにおいて以下のような基準を用います。
- ロジカルに話せるか
- 成果に向かって行動できるか
- 地頭が良いか(いわゆる思考力)
- 過去の経験が「すごい」かどうか
こうした基準はもちろん重要です。
しかし、これらは“誰が見ても優秀な人材”を測る物差しであり、
“うちに合う人材”を見極める物差しではないのです。
結果として、「優秀だけど、なんとなく違和感がある」という直感が採用現場に残り、
その違和感を説明できないまま“見送り”という判断が下される。
まさに、「カルチャーフィット」を言語化できていないがゆえの“取りこぼし”が起きているのです。
カルチャーフィットとは何か?
「カルチャーフィット」とは、単に“うちの雰囲気に合う”という曖昧な話ではありません。
本質的には、以下の3つの視点から捉えることができます。
1. 価値観の一致
その人が大切にしている仕事観・人間観が、企業の行動指針や文化とどの程度一致しているか。
例)
- 「成果を個人で出す」ことを重視する人と、
「チームで助け合う」ことを重視する組織とのミスマッチ。
2. コミュニケーションスタイルの相性
意思決定のスピード、会話のトーン、上下関係の感覚など、日常のやりとりの快・不快に関わる部分。
例)
- 「慎重に準備してから話したい」人が、「とりあえず話してみる」文化に違和感を感じる、など。
3. 成長観の一致
どんな成長を理想とするか、また、その過程にどう向き合うかのスタンス。
例)
- じっくりと基礎を固めてステップアップしたい学生と、「まずやってみる」が重視されるカルチャーとのズレ。
なぜカルチャーフィットを見落とすのか?
1. 言語化されていない企業文化
「うちのカルチャーって何?」と聞かれて、即答できる企業はまだ多くありません。
- 社風=仲がいい
- フラットでオープン
- 自由と責任がある
こうしたフレーズは一見よく聞くものですが、具体的な行動や習慣に落とし込まれていない場合、選考での見極めにも活用できません。
2. 評価者が“無意識のバイアス”で見ている
カルチャーに合う・合わないという感覚は、しばしば“好み”や“主観”と混同されます。
- 「なんとなく自分っぽい」=高評価
- 「違和感がある」=即NG
こうしたバイアスを排除するには、カルチャーに関する共通言語・評価軸を持つ必要があります。
3. 面接の設計が“スキル型”に寄りすぎている
「過去の経験」「問題解決プロセス」「リーダーシップ経験」など、構造的に“優秀さ”を問う質問は多くても、
「あなたらしさ」「どういう場で力を発揮できるか」など、カルチャー的側面を測る質問は不足しがちです。
カルチャーフィットを選考に組み込むために
1. 自社の“らしさ”を言語化する
まずは社内で、こうした問いに取り組んでみてください。
- 「うちで活躍している人の共通点は?」
- 「逆に、うまくいかなかった人に共通する特徴は?」
- 「この会社らしさって、どんな瞬間に現れる?」
こうした対話を通じて、自社における“フィット”とは何かを明確にします。
2. 面接で「価値観」に触れる問いを設計する
スキルだけでなく、“その人のらしさ”に光を当てる質問を増やすことで、カルチャーフィットの判断精度が高まります。
例)
- 「今までで一番、組織と“合わないな”と感じた経験は?」
- 「どんなときに“この人たちと働きたい”と感じますか?」
- 「仕事をする上で、譲れないことは何ですか?」
3. 評価のすり合わせを丁寧に行う
「優秀だけど違和感がある」という感覚は、“誰にとっての違和感か”を明確にしない限り、正しく扱えません。
- 「違和感」の正体は、スキルなのか、価値観なのか
- 誰のフィードバックにバイアスがかかっていないか
- その違和感は、本当に“活躍できない”こととイコールか?
採用チームで丁寧に振り返ることで、判断の精度は格段に高まります。
まとめ:「うちに合う」を、もう一度見つめ直す
「優秀なのに落とした」という採用の後悔は、“自社のカルチャーを言語化できていないこと”の表れです。
- 「地頭がいいか」ではなく、「うちの空気で力を発揮できるか」
- 「実績がすごいか」ではなく、「一緒に成長していけるか」
カルチャーフィットの見極めは難しい領域ではありますが、長期的な定着・活躍を考えるうえで、最も重要な視点のひとつです。
選考とは、学生をジャッジする場ではなく、
「お互いにフィットするかどうかを共に探るプロセス」。
そう捉えることから、採用の本質が見えてきます。
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