はじめに

「何がしたいかわからない」「好きなことが思い浮かばない」
こうした状態は、多くの人が人生のどこかで経験します。

しかしこれは“意欲の欠如”ではなく、
脳の意思決定システムが一時的にうまく働いていない状態とも言えます。

今日は、心理学・脳科学の視点からその正体を整理していきます。


1. なぜ「やりたいこと」がわからなくなるのか?

① 情報過多で脳の“選択機能”がフリーズする

現代は常に選択を迫られています。

  • SNSで流れてくる“正解”
  • 他人の成功例
  • キャリアの選択肢の増加

これらが脳に負荷をかけ、
「どれを選べばいいかわからない」=選択麻痺
が起きます。

脳は負荷が大きいほど、「決めない」を選ぶようにできています。


② 過去の失敗が“未来の選択”を止める

心理学では「学習性無力感」と呼ばれます。

過去にうまくいかなかった経験が蓄積すると、
脳は未来への挑戦をリスクと判断し、選択行動を抑制します。

  • また失敗したらどうしよう
  • 選んでも意味がない気がする
  • 自信が持てない

という気持ちは、防衛反応なのです。


③ 感情が疲れていると意思決定ができなくなる

意思決定にはエネルギーが必要で、
特に「情動処理」は脳の大きなリソースを使います。

  • 職場のストレス
  • 人間関係の圧
  • 小さな不安の蓄積

これらで感情が疲れていると、
“決める余力”がなくなる=決断機能の低下
が起きます。


④ 自分の感情が言語化できず“選択の材料”が不足する

「やりたいこと」は、
自分の感情(好き・嫌い・安心・好奇心)が材料になって生まれます。

しかし、

  • 過剰な気遣い
  • 慎重すぎる性格
  • 小さな頃からの抑圧経験

があると、感情が分からなくなり、
材料がないため“選べない”状態に陥ります。


⑤ 他人軸で生きていると選択の基準が自分になくなる

“やりたいこと”は本来、
「自分がやってみたい」「心が動く」が基準です。

しかし、

  • 親の期待
  • 上司の評価
  • 世間の正しさ
  • SNSの「これが良いよ」情報

に影響され続けると、
選択基準が他人の価値観に奪われ、やりたいことが見えなくなるのです。


2. 意思決定が止まっている人が出す“サイン”

  • 決めるのがとにかく面倒
  • 失敗が怖い
  • 気分が落ちる日が多い
  • 比較癖がある
  • 休んでも頭がスッキリしない
  • 選択肢が多いと逆に動けない

これらが3つ以上当てはまれば、
意思決定機能はかなり疲れています。


3. 「やりたいこと」を取り戻すための心理学的ステップ

① “やりたくないこと”を先に書き出す

脳は「消去法」の方が先に動きます。

  • 嫌いな働き方
  • 苦手な人間関係
  • 疲れる環境
  • 価値が合わない仕事

やりたくないことが明確になると、
やりたいことの輪郭が浮かび上がります。


② 小さな興味を“0.3秒”で拾う

本能的な「興味」は一瞬で発火します。

  • ちょっと気になる
  • 面白そう
  • 見てみたい

この0.3秒の感情を逃さずメモすることで、
“やりたいことの種”が集まります。


③ 1つに絞らなくてOK。“暫定のやりたいこと”を複数持つ

「これじゃないとダメ」と思うほど、決められなくなります。

心理学的には
複数の暫定案を持つ方が行動が進む
とされています。

  • ちょっと興味あること
  • 一度やってみたいこと
  • もしやるならこれかな

これくらいの“ゆるさ”で十分。


④ 行動は「5%だけ」で始める

やりたいことは、やってみないと本当のところは分かりません。

  • 本を1ページ読む
  • 5分だけ調べる
  • 相談してみる
  • 体験会に応募する

5%の行動で脳は
「動いていいんだ」と再起動します。


⑤ 自分のペースで決める“感情の回復期間”を取る

意思決定が止まっているときは、
感情が疲れていることが多いです。

  • 睡眠
  • 散歩
  • 一人の時間
  • SNS断ち

これらは「選択機能」を回復させます。


まとめ:やりたいことがわからないのは“故障”ではなく“疲労”です

あなたが怠けているわけでも、能力不足でもありません。
脳が疲れ、心の材料が不足し、過去や他人の影響を受けているだけです。

そして、意思決定機能は確実に回復します。

小さな興味を拾い、5%だけ動き、自分の感情に再びアクセスできるようになれば、
「やりたいこと」は自然と見えるようになります。

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