はじめに

「うちは風通しがいいから大丈夫」「ハラスメントなんて他人事」「指導とハラスメントの違いが分からない」

そんな認識のまま、気づかぬうちに“心理的リスク”を社内に抱えてしまっているケースが少なくありません。

パワハラ、セクハラ、モラハラといった言葉が社会に浸透した今、企業にとってハラスメント対策は“対外的なリスク管理”というだけでなく、従業員のエンゲージメントや離職率、メンタルヘルスに直結する重大なテーマです。

この記事では、心理学の知見をもとに、ハラスメントがなぜ起こるのか、組織が見落としがちな“予兆”や“関係性の歪み”について整理し、未然に防ぐための視点とアプローチを紹介します。

ハラスメントの定義と「グレーゾーン」の難しさ

厚生労働省によれば、パワハラの定義は「職場において優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて身体的・精神的苦痛を与えること」とされています。

しかし、現場では「指導のつもりだった」「悪気はなかった」という“意図と受け取りのズレ”によって、加害・被害の認識がすれ違うことが少なくありません。

特に注意したいのは、明確な暴言・暴力ではなく、「圧をかける言い回し」や「無視・排除」「必要以上の詮索」など、目に見えにくい“グレーゾーンのハラスメント”です。

こうしたコミュニケーションのズレが積み重なることで、心理的安全性が低下し、職場に沈黙や不信が広がります。

「大丈夫な人」と「傷つく人」がいるという前提

心理学的に見れば、人は生まれ持った気質や過去の経験によって「感受性の高さ」に差があります。

たとえば、「軽口のつもり」「笑って流してほしい」と言った言葉でも、それを真に受けて深く傷つく人もいます。これは過剰反応ではなく、その人の心の構造の違いなのです。

また、ハラスメントの背景には、「相手の立場に共感しにくい」「感情の読み取りが弱い」といった、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)や、社会的スキルの不足があることも分かっています。

つまり、加害意図の有無よりも、「相手がどう受け取ったか」に焦点を当てることが、ハラスメント対策の第一歩になります。

ハラスメントを“放置する組織”の心理的なリスク

ハラスメントが放置される職場には、いくつかの特徴があります。

  • 上司が部下の感情に無関心である
  • 「言っても無駄」と感じる風土がある
  • 異議申し立てのルートが形式的で機能していない
  • 問題を指摘した人が“浮く”空気がある

このような状態が続くと、社員は「この会社は自分を守ってくれない」という無力感や孤立感を抱き、やがてはメンタル不調や離職につながっていきます。

さらに恐ろしいのは、管理職自身が「自分が正しい」と信じている場合、無自覚に相手を追い詰めてしまうこと。心理的安全性のない組織では、このような“正義による暴走”が起こりやすくなります。

“未然に防ぐ”ために組織ができること

まず重要なのは、ハラスメントを「個人の資質」の問題としてではなく、「関係性と文化」の問題として捉えることです。

心理的リスクを減らすためには、次のような取り組みが有効です。

  1. 管理職向けの“感情理解”と“傾聴力”の研修を行う
  2. 1on1の場で「感情の共有」を促進する対話の仕組みをつくる
  3. 「気になったことを言える」風土を言語化して全社で共有する
  4. 第三者に相談できる外部カウンセリング制度を整える

そして何より、リーダー自身が「自分も無意識に人を傷つけているかもしれない」という前提で自己理解を深めることが、組織全体の関係性の質を底上げする大きな鍵になります。

おわりに:「うちは関係ない」と思ったときこそ要注意

ハラスメントは、問題が顕在化した時点ではすでに“遅い”ことが多くあります。だからこそ、「うちは大丈夫」と思っている組織ほど、見えないリスクが潜んでいる可能性があるのです。

心理学の知見を活用して、関係性を見直し、感情の声に耳を傾ける文化を育てていくこと。それが、誰もが安心して働ける職場をつくる第一歩になります。

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